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【レポート】IoTなどの新規事業を成功させるには 1→10ACADEMY@WeWork

2019年5月30日にWeWorkアイスバーグにて、行なったイベント「IoTなどの新規事業を成功させるには」のレポートです。

▼登壇者
小林 茂(情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 教授)
森岡 東洋志(株式会社ワントゥーテン)

モデレーター
中間 じゅん(株式会社ワントゥーテン)

なぜこのイベントを企画したのか?

最新テクノロジーを応用した新規事業を進める中で、数々の苦労をがありました。
そんななか、経済産業省が立ち上げたStartup Factory構築事業のガイドラインが掲げるものづくりのガイドラインに強く共感しました。このガイドラインはスタートアップだけではなく、共創プロジェクト、システム開発、Webサイト構築でも活用できるステップが言語化・可視化されています。
良いものづくりのために「事前に知っておけば避けられるトラブル」や知識があることでスムーズに物事を進められる指針になることを、知ってもらいたくモデレータをつとめ、イベントを実施することになりました。


ワン・トゥー・テン(1→10) ってこんな会社

今回のイベントを主催し、私が勤めている会社について。

■株式会社ワントゥーテンについて
 最先端テクノロジーを軸に、デジタル技術を駆使した新サービスの開発や、プロジェクションマッピングやXRなどを活用した商業施設やイベントのデジタル演出などを行っているクリエイティブスタジオ。2018年1月に行われた東儀秀樹出演の「源氏物語音楽絵巻~儚き夢幻~」でのデジタル映像表現、また7月に行われた市川海老蔵出演の「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎 夜の部 『通し狂言 源氏物語』」でのイマーシブ(没入型)プロジェクションなどに見られる、日本の伝統文化と先端テクノロジーの融合によるアート活動のMixedArts(複合芸術)プロジェクトや、夜の旧芝離宮恩賜公園を活用した紅葉ライトアップイベントの総合演出、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせた新しいスポーツエンターテイメントのCYBER SPORTS プロジェクトなど、多くの独自プロジェクトも進行している。
URL:https://www.1-10.com/

小林教授によるStartup Factory構築事業についての説明

Startup Factory構築事業とは
経済産業省が、ハードウェアをはじめとした独自のプロダクトの量産に挑む
スタートアップを支援するための拠点構築を後押し。

今回ゲストとしてお招きしたIAMASの小林教授は、Startup Factory構築事業の契約ガイドラインと契約書フォーマットを策定するための契約ガイドライン策定業務検討会の座長を務められました。

なぜこのガイドラインを作ったか?
ハードウェアに関わるスタートアップの人たちは、ハードウェアの製作に関わったことがある人が多くないことから、ファクトリー(製造業者)とのやりとりがうまくいかず、トラブルが起こるケースが多かったそうです。

スタートアップと、たくさんの知見を持つ古くからのファクトリーは、「ものづくり」に対する文化が異なるため、同じ日本語で対話していても会話が通じないことが、スタートアップを阻む「量産化の壁」トラブルのもとになっていました。

そこで、スタートアップとファクトリーが良い関係を構築するため、現場で何が起きているのかを野村総合研究所が調査をされた結果、様々な問題が起きていることがわかりました。現場の課題を解決するために、どうすれば良いのかを、第一線で活躍される専門家たちとゼロから考えて作り上げたのが契約ガイドラインと契約書フォーマットです。

契約ガイドラインについて

まず、ガイドラインでは良いものづくりのために「双方の活動スタイルの違いを理解した上で、良好なコミュニケーションを心がけましょう」というメッセージを冒頭に書かれています。
一言に「製品開発」と言っても様々なフェーズがあり、業界によっても呼び方が異なるため、「プロトタイプ 」「試作」が何のことを指しているか伝わらないケースがあり、フェーズごとでどの試作を指している認識合わせできるように図で表現されています。
例えば、スタートアップは原理試作を指して「試作」と伝えても、ファクトリー側が量産試作のことだと勘違いしてしまうケースもありえてしまうのです。

スタートアップにとって予測のつかないプロトタイプ 以降の量産フェーズに、どういうことが行われるのかわかりやすく整理されています。
各フェーズの詳細にはどのようなインプット・アウトプットが必要か、どのような費用が発生する可能性があるかまで、詳しく記載されています。
「あるある問題事例・リスク」では具体名は伏せられているものの事実に基づく生々しいトラブル事例と対策もあります。

スタートアップが最も避けたい「時間の浪費」を避けられるガイドラインとなっています。


契約書フォーマットについて

契約書については、専門家に任せがちですが、プロジェクトを進める上で、エンジニアにとってのコードと同じくらいとても重要なものです。
このフォーマットにはトラブル回避の参考になることが網羅的に書かれています。また契約書の内容を変更したい時にも、それぞれの項目の設計意図が示されているため、スタートアップが担当の弁護士と相談しやすいフォーマットになっています。
契約書は情報量が非常に多いため、重要なこと(知財や開発中のトラブルなど)が冒頭に記載される工夫もされています。

▼今回、登壇いただいた小林茂教授のガイドライン・フォーマットに関するインタビュー記事。


1→10テクニカルディレクタ森岡による発表

1→10は、メーカーなどの協業パートナーとして、新製品開発(新規事業開発)に関わるため、少しスタートアップ事業者と異なる動きをします。

数年前まで、IoTの新製品開発は、国内ではスタートアップが多かったですが、既存メーカーも新ジャンルの製品事業に乗り出しています。

また、今回のStartup Factory構築事業のガイドラインの指す範囲では、1→10は、
・要件・要求定義
・原理試作
を担当するケースが多いです。
場合によっては量産設計以降についても橋渡しのディレクションを行います。

メーカーなどスタートアップ以外の企業にとっての『新製品開発(新規事業開発)』
スタートアップ事業者は、『新製品開発(新規事業開発)』一つに一点集中できますが、メーカーの場合は『新製品開発(新規事業開発)』を一括りのロジックにできない様々なバリエーションがあります。


・シード的新製品開発
 
新規事業/新製品のタネを探す、通常業務の間でできる(20%ルールなど)

・メタな新製品開発
 人材育成や「新規事業のための社内環境構築」が主な目的。
 SXSWなど単発イベントに向けてプロジェクトが組まれるケースが多い。

・事業立ち上げを含む新製品開発
 新たな事業、市場を創る。スタートアップ的な動きをする組織。
 (実務面ではスタートアップファクトリーの動きが参考になる)全く異業種と組むケースがある。

・継続的新製品開発
 
既存のプロダクトの知見をベースに新たな新製品を開発する。


詳細は以下のスライドをご覧ください。

ディスカッション

小林教授と1→10テクニカルディレクタ森岡の発表を元に、下記の3点について議論しました。

・IoT新規事業を進める上での注意点
既存サービスにIoT機能を付加してデータを取りたがるが、それがユーザーへの価値があるか加味して検討すべき(1→10森岡)

IoTには言葉の罠がある「IoT=テクノロジー」ではなく「テクノロジーを使って作り上げるものがIoT」
いろいろな物事をインターネットのように繋いで価値を創出することを再認識したほうがいい(小林教授)


・そもそもIoTである必要があるのか
例えば、椅子をIoTにする場合、座っているデータを取るだけではユーザーが感じる価値の部分がないためサービスとして成立していない。例えばより座りやすく変形するなど、ユーザーが感じれるアウトプットまで考える必要がある。(1→10森岡)

うまくいかないプロジェクトはだいたい発注から間違っているケースが多い。一歩巻き戻してでも「何をやろうとしているのか」を問い直したほうが発注側と受注側にとって意義がある(小林教授)


・価値検証のためのプロトタイプ とは
新しい価値づくりには小さな失敗や冒険を繰り返さなければいけないのでプロトタイプ を反復することが必要(1→10森岡)

IoTの本質は、簡単なものでいいので自分で作ってみないと理解できないと思う。その道の権威の講演を聞いたりして学習するより、理解できない概念は半日でも手を動かして体感して理解するほうが重要(小林教授)


また、「プロトタイプ 」と一言に行っても段階によって粒度も異なるため、プロジェクトで使う際、注意が必要であることがあげられました。

体験のためのプロトタイプ
├ 1. 映像試作(ムービー・プロトタイプ)
├ 2. 体験試作(エクスペリメンタル・プロトタイプ)
└ 3. もっと簡易な紙やロールプレイでも可
実現のためのプロトタイプ
├ 1. 外観試作(コールド・プロトタイプ)
├ 2. 技術試作(テクニカル・プロトタイプ)
└ 3. 総合技術試作
  ├ 4. 最終体験試作(ホット・モック)
  └ 5. 量産試作


1→10の関わったIoT事業(一部)

SUNSTAR G•U•M PLAY(テクニカルディレクション・量産設計)

https://works.1-10.com/product/sunstar-gumplay/

LION ながら腹囲チェッカー(IoTプロトタイプ開発)

https://works.1-10.com/product/lion-nagara-fukui-checker/


コクヨ しゅくだいやる気ペン(仮)(IoTプロトタイプ開発)

https://works.1-10.com/product/kokuyo/


JINS MEME ZEN(ウェアラブルデバイスと連携するスマホアプリ開発)

https://works.1-10.com/app/jins-meme-zen/


1→10メンバーのnote

テクニカルディレクター森岡のnoteはこちら。

私(中間)が新規事業について書いたnoteはこちら。


まとめ

・ソフトとハードの垣根が低くなり、IoTの製品も世に出ているが、まだ「ものづくり」の工程は現場ではギャップがあるため、Startup Factory構築事業のガイドラインや契約書を活用することがおすすめ。

・流行に流されずに、本当にIoTがサービス成立し、継続して使われるものになるか検証するためにプロトタイプは有用。


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