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アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気づきが学びとリスク回避になる

多国籍人材を抱える国家のような企業Googleが、いち早く取り入れたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を学ぶことで、多様な人材がお互いに安心して働けるという考え方があります。自分の勉強したことの備忘録として書いてみました。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは

グローバル企業の一部のリテラシーのある人だけのものではなく、日本企業でもここ数年、社員教育の研修として取り入れられるようになってきました。
変化の激しい時代に、多様化する環境に効果的に対応し、企業として顧客の要望に応え価値を創り上げることが期待されています。

最近、SNSで個人が発信力を持つことから頻出している、企業の広告でのジェンダー表現が、ステレオタイプを増長するものとSNSで指摘されることや、社員からのハラスメント告発など、当事者だけではない同じ市民として義憤を持つ人々からの炎上へのリスク回避にもつながります。

政治的な正義や、イデオロギーの話ではなく、もっと身近な日常のことで、多様な人々とより良く接していくこと、地雷を踏まないための対策として、私は自分の中にある偏見の所在を知ることは大人になってから学ぶのに遅いことはない思います。

性別、年齢、障がい、国籍問わず個を尊重した「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)」という言葉が聞かれるようになりましたが、言葉が生まれたアメリカでは多民族国家として、アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)などの文脈から一般的に浸透していきました。

ダイバーシティ&インクルージョンは、日本では企業での女性活躍のための文脈で使われ出しましたが、徐々に本来の意味である多様な属性の人との関係性を意味するようになってきました。これを叶える上で、アンコンシャス・バイアスの無意識の偏見や、根拠なき思い込みに気づいて意識することが重要であると言われています。

バイアスは、対人だけではなく自分自身に対しても含め、様々な種類があります。
これを知ることで不寛容なのは他者なのか、自分自身なのかを見つめ直すきっかけになります。
確証バイアス
ステレオタイプ
ハロー効果
正常性バイアス
権威バイアス
コミットメントのエスカレーション
アインシュテルング効果
集団同調性バイアス
自己奉仕バイアス
専門偏向
サンクコスト効果
バラの回願
ダイニング・クルーガー効果
インポスター症候群


多様性は息苦しい?

多様性が尊重されていく中で、近頃、ポリティカル・コレクトネス(政治的な妥当性)という言葉は、自由に発言できない窮屈さを表す言葉として使われ、コンプライアンスへの厳しさは、「配慮することが増え息苦しく感じる」という声も見聞きします。
女性である私は、この考えが広まることで生きやすくなる流れだと思っていますが、自分もいつ地雷を踏むかわからない時代でもあります。

ある企業では、出張時の飲食費に肉が含まれている場合、ベジタリアンの経営者が動物に配慮して経費対象外になる場合があったり、素晴らしいコンテンツを世に出しているNetflixも相互監視的な厳しい労働環境は記事となり取り上げられています。
確かにあらゆる配慮の結果生まれたルールは、今までより人の行動を制限することもあります。


リスク回避

SNSで民衆の声が可視化され、広告でのジェンダー表現についての炎上が増えてきました。#MeTooの波はアメリカから日本にも波及し、財務省事務次官へのセクハラ告発や、衆議議員のLGBT差別発言での雑誌休刊騒動、具体名は上げませんが、日本のメーカーがSNSを起点に告発されたり、社員個人のヘイト発言やセクハラで企業が謝罪を出す事態も起きています。

全方位に配慮して人と接さないで生活するわけにはいかないので、バイアスについて認識があるだけでも、万一コトを起こしてしまった際、更にコトを荒だてない対処もできるかもしれません。

現在、海外で疑問視されている点として、AIアシスタントに女性が多いことから、後付けで男性の音声を追加してバランスをとっています。
このテクノロジーの世界にも残る性別ごとの役割づけへの問題提起は日本にもくるかもしれません。


多様性あるチームには新たな価値が生まれる

多様な価値観による創造的な場づくりや、単なる人道主義の綺麗事ではなく、生々しいビジネスの場でのリスク回避と価値を生み出します。

・バイアスを意識したコミュニケーションをすることで、個々人が成長しやすくなる。
・発言がしやすくなる
・バイアスに自覚的なリーダーは「自己認知力」が高いことで信頼される

 「調査結果によると、身体的多様性があるだけでも、パフォーマンスは上がる。データドリブンの企業なら、こうしたパフォーマンス向上はやる気を大きく高める。また、ダイバーシティに欠ける企業が、公然と警告を突きつけられつつあるのも事実だ。ビジネスを失うことにすらなりかねないし、もちろん採用活動でも後れを取る。あの米Googleですら、ダイバーシティ不足の影響が見え始めている」


バイアスから救われる人々

このバイアスに気づき、配慮する人が増えることで生きやすくなる人々がいます。

・男性に育休制度がなく子育てに参加したくてもできない
・事務的な仕事は女性に任せられがち
・「今どきの若者は」という偏見
・外国人はコミュニケーションを取るのが難しいと思われて日本で仕事しづらい
・セクシャルマイノリティーの人々が、世間のバイアスの「普通」の価値観ではないことから疎外感を感じる

男性のつらさ、女性のつらさ、LGBTQのつらさ、他国からの移民の増加に対して自分がどのような「まなざし」を持って接しているか、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に気づくことは、他者への優しさと自分自身の生きやすさにもつながるかもしれません。


クリエイティブなバイアスの破り方

海外の企業では、SNS時代により信頼性と世論へアンテナを張る感度の高さが求められるようになってきました。
バイアスに対して姿勢を示すことがビジネスとして顧客層へのブランディングになっています。

世界でバイアスにまつわる社会課題に斬り込んでいるプロジェクトをいくつか紹介します。

VolvoのThe E.V.A. Initiative
ほとんどの自動車メーカーは、男性の衝突実験用ダミーを使った実験に基づいてクルマを設計。そこで、交通事故で女性の方がむち打ち症になるリスクが高いことをVolvoが問題提起しました。

Nikeの企業姿勢
人種差別への抗議として国歌斉唱で起立しなかった元NFLのコリン・キャパニック選手を広告に起用。トランプ大統領も言及するほど大きな議論を起こし、一時的に株価にも影響を及ぼしましたが、この議論は広告ではなく、ニュースとして世界に伝搬し国際的広告祭カンヌライオンズ 2019年度でグランプリを受賞しました。


GilletteのFirst Shave, the story of Samson
トランスジェンダーで、娘から息子に変わった自分の子に、父親がはじめてのひげ剃りを教えるプライド月間(6月)に発信された動画。Facebookで150万回され、称賛されています。


ディーゼルのPRIDE月間に見せた姿勢
LGBTQを支持し続けているディーゼルは、プライド月間に関する投稿をInstagramにして、フォロワーを約1万4000人失ったものの、逆にブランドの矜持としてそれを祝う投稿をして話題になりました。

パラリンピアンはスーパーヒューマンという新しい概念
2012年ロンドン五輪・パラリンピックで打ち出されたパラスポーツアスリートを「スーパーヒューマン 」と表現したことは「障がい者と非障がい者の能力に違いはない」という力強いメッセージで、これまでのバイアスを打ち破りました。


日本での取り組み
炎上のニュースが目立ちますが、日本も歩みは先進的な企業に比べてゆっくりなものの前向きな動きをしているところもたくさんあります。
最近は、テレビCMでも家事をするのが女性に偏らない演出が増えてきました。


キリン
トランスジェンダー社員に対して、性別適合手術のための有給を取れるようにしています。
LGBTQアライの企業も多く出てきています。

ダイキン
男性の育休率が高く、さらに育休中社員のキャリアアップを支援を大学と連携して行うことを発表しました。

ALSなどの障がいを持つ人がロボットを遠隔操作し接客するカフェ
株式会社オリィ研究所の分身ロボット「OriHime-D」を使って、ALSやSMAや頸椎損傷などの障がい者が遠隔操作で接客するカフェを実証実験。日本財団や全日空(ANA)が参画しています。


「最近コンプライアンスにうるさいから」ではなく現代の持つべき知識

バイアスへのリスクは、世界的なメガトレンドとして仕事やプライベートで意識していくべきものになりました。
経産省が発表した「日本の中長期ビジョンの検討に関する調査 - 経済産業省」でも、アンコンシャス・バイアスへの意識が必要となる項目が見られます。

最も望ましいのは、価値観の固まる成人よりは、このように子どもの頃から他者を知る教育です。
最近のディズニー映画では女の子の描き方が顕著に変化しています。

デジタル無くして社会が成り立たなくなってきている現代でも、テクノロジー業界の女性比率は低いです。少女たちに向けて、過去にテクノロジーの分野で活躍した実在の女性たちをポスターにしているプロジェクトもあります。

とはいえ、社会生活で初めて多様な人々の困難知ることは私も大人になってからのほうが多いです。

「SOGIハラ」という概念では、性にまつわることはすべての人に関係するハラスメントの種類をあげています。

想像力を養って、文化背景、セクシャリティ、ステレオタイプで判断しないことは、他者への理解を促し、自身のリスク回避にもつながります。

自分を過信しすぎず、変化の激しい現代でときには自分の確信を疑い、誰しもがアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を持っているということを知っていることが、多様性を活用しリスクを回避することにつながります。


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