膨大な書物を保管するこの書庫は、広すぎるのか手入れがなってない場所も多く、埃っぽい。
 禁断魔法についてまとめられた書物のある欄は、最近他の人も立ち寄ったのか比較的綺麗だった。

「禁断魔法……」

 本棚から数冊、それらしいものを抜き取り床に座り込み読んでいく。
 それらの内容はどれも禁断魔法の内容や種類、その対価など似たようなものばかりだ。

「どれも同じようなのばっか…、皆なにを纏めて書いてるんだ…」

 ハァ…、とため息をつくと一通り内容をメモし本を元に戻せば書物庫を後にした。

 夜までいると思っていた書物庫を出たのはまだ太陽が上にある時間で、余ってしまった時間をどう使うか、それだけを考えて学院内をフラついていた。

「あら、書物庫帰り?」
「先生ボクのストーカーですか? こんなに広い学院内でなんでこんなに頻繁に会うんです」
「知らないしストーカーなんかじゃないわよ。
というか収穫なかったみたいね」

 まぁ…、と返事をするとダルい気持ちを見透かしたように笑う先生に若干のウザさを覚える。

「そんなクロエちゃんにいいもの見せてあげるわ、どうせ暇でしょ?ついてらっしゃい」
「どうせ暇って、いや暇ですけど…」

 自信ありげにそう言うと、アトラ魔術院の外へと足を進める先生に駆け足で追いつくとあとをついていった。


「先生ここ、って…」
「クロエちゃんも知ってるでしょう? 魔法刑務所」

 トネロアの中心、王宮ジルコニットの地下に連れてこられたと思ったらそこは本や噂話で耳にした事のある、魔法刑務所で。
 地下ならではの少し篭った雰囲気に帰りたくなる。

「なんでこんなところに連れてきたんですか…」
「なんでって、禁断魔法について纏められなくて困ってるんでしょう?
読んでわからないなら見る、そして学ぶのよ」

 こちらを振り返ることもせず黒いローブを揺らしながら前を歩く先生の後ろを、離れないようについて行く。

 禁断魔法を見るって…、先生が使うってこと? いや、それとも……

 魔法刑務所がどんな所か、細かいことは書物に記載されていないけれど聞いたことがある。
 ここにいる人は魔法を以て処刑されるのだと。


「---ラさん、その子は? そのローブ魔術院の生徒でしょう」
「ちょっと課外授業を、ね。 上に許可は得てるから」
「なるほど、さっき言われたのはこの事でしたか。大丈夫とは思いますがお気をつけて」

 少しだけ厳重な、見張りのいるドアを抜ければ雰囲気が変わったのが全身で感じられた。

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