妖旅館_Ss 同族。

「よいしょっと…」

お客様がチェックアウトした後の客室の掃除を手際よく進めていく。

使用済みのタオルや布団カバーは洗濯カゴに入れてリネン室に。
敷布団は三つ折りに畳んで押し入れの中に入れる、ついでに座布団や枕も。

一通り掃除が終わったので洗濯物が入った洗濯カゴを抱えて客室を後にする。

これ洗濯したら休憩だから蓮華様の所に行こうかなぁ。蓮華様、また何処かにフラフラ消えてないといいけど。

受付で働く銀色の九尾の姿を思い浮かべながら小夏は足を進めた。

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「蓮華様〜、小夏ですよ〜!」

「ふふ、今日も可愛いのぅ。ここに来たと言うことは休憩時かの?」

「はい! 比較的お仕事が楽なので少し早めに休憩をいただきましたっ。」

受付に顔を出すと目的の九尾は腰掛けに座っており、お菓子を片手に仕事をしていたようだった。

「そう言えば、小夏は初めて顔を合わせるのではないか?」

蓮華そう言い、隣にいた髪の短い女の子を紹介する。

「小夏と同じ化け狸の子でのぅ、少々臆病であるが可愛い娘よ。
同じ狸同士気もあうのではないか?」

「私とおんなじ化け狸なの?! うれしいっ、私小夏っていうの。よろしくね!」

「よっ、よろしく……」

自分と同じ化け狸の子だと聞いてずいっと、身体を乗り出し挨拶をしたら怖がらせてしまったようで。蓮華の尻尾の影に隠れてしまった。

「はっは、怖がられてしまったのぅ。我も初対面は怖がられたものよ、喰うてやろうか?なんて冗談を言ったばかりに大変だったのじゃよ。」

怖がられている様子に蓮華も初対面の時を語りケタケタと笑っていた。

そりゃ、玉藻前の九尾である蓮華様に食べてやるって脅されたら怖がっちゃうよ……

「この様子じゃ、まだ挨拶は出来なさそうじゃのぅ。
この娘は琴ノ葉と言うから覚えてやってくれ、何度か挨拶を重ねたら琴ノ葉も挨拶してくれるようになるからの。」

「琴ノ葉ちゃんって言うんだね、覚えたよ!」

未だに蓮華影に隠れる少女を見ながら蓮華の言葉に返事をする。

琴ノ葉ちゃんかぁ…、そのうちお話してくれたらうれしいなぁ。
私みたいに耳と尻尾は出さないのかな…?

「そう言えば、休憩時に受付に来るのは良いが昼飯はとったのかのぅ?」

「ま、まだです! 蓮華様に会いに来るのですっかり忘れてました!」

「忘れぬうちに食べてくるとよい、腹が減ってはなんとやら。小夏が倒れたら心配じゃからのぅ。」

「じゃあお昼ご飯食べてきます! 蓮華様も琴ノ葉ちゃんもまた今度!」

今はまだ話せない子にも、話せればいいなぁと期待を込めて挨拶をした。

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