恋木犀_Ss 煽り酒
仕事が終わり帰る身支度を進めながらスマホを確認すると、大学時代から付き合いのある桜庭から連絡が来ていた。
どうやら休憩時間に今夜飲みに誘った件の返事をくれたらしい。
返事は飲みに付き合ってくれる、との事で四片さんに連絡をする。
見てくれるか分からないけれど、一応ね。
遠くで仕事のある四片さんは今日は帰ってこない予定で、意識すれば痛みを感じる身体中の跡に口元を緩めながらメールを送った。
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「お待たせ、ごめんね。いきなり飲みに誘って。」
「いや、大丈夫だよ。」
そんなに待ってないし。と桜庭は笑った。
馴染みのバーで2人ともカクテルを頼みながら言葉を交わす。
「そう言えば、この間のみあちゃんとのデートどうだったのよ。
顔赤くしながらわたしに服選んで欲しいって頼んできて、とっても可愛いかったんだから。」
「碓氷が服選んでたのか、通りで…」
「可愛かったでしょう?きちんと可愛く仕上げながら桜庭の好きそうな格好にしたんだから、感謝してくれてもいいのよ。」
「はいはい、感謝してる。好きな酒、頼んでいいよ。」
「さっすがー、せっかく桜庭の金で飲むなら高いのでも頼もうかしら。」
なんて冗談と酒を1時間ほど交わすといい具合にアルコールも効いてくる。
アルコールと恥ずかしさに顔を赤らめながら自分の恋人について語る桜庭を見ているとわたしの頬も痛いくらいに緩む。
「にしてもほんと、ずーっと花屋で生活するんだと思ったらあんなに可愛い子と幸せにしてるなんて。
桜庭が幸せそうでよかったわ、勿論みあちゃんもだけどね。」
「碓氷こそ、幸せにしてるみたいでよかったよ。」
「お互い様って感じね。」
なんて言ってカクテルグラスに口付ける。
数少ない付き合いの長い友人が幸せそうで本当に良かったわ。
桜庭は当たり前だけどみあちゃんもわたしの友達だもの、ずっと幸せでいてほしいわね。
「じゃあいつもの勝負事でしようじゃないの。」
「今日もやるのか…、知ってはいたけど。」
「あら、嫌ならやめる?
しょうがないわよね桜庭の方が年下なんだもの、年上のわたしには勝てっこないわよね〜」
ニッコリと口角を上げてわざとらしく煽ると、誘いに乗ったのか桜庭が席を立ち「年下に負けても知りませんよ?」と、店の奥にあるビリヤード台の方へと歩いていく。
その後を追うように席を立ち、コツコツとヒールを鳴らしながら同じ場所へと歩いていく…
「簡単にのってくるんだから、楽しくなりそうね。」
1人、笑いながら呟いた言葉は薄暗い空間に消えていった。
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