妖旅館_Ss 鈴の音。

チリーン、と耳に入る鈴の音で微睡んでいた蓮華の意識が戻る。

「ふぅ……、疲れで思わず寝てしまっておったのぅ。杏子嬢の鈴の音で目が覚めたわい。」

感謝するぞ。とニッコリ笑いながら隣の席に腰掛ける、猫又の白木 杏子に話しかける。

あまりにも客の出入りが多すぎて抜け出す暇も無かったからのぅ。
不意の休憩に思わず寝てしまったわい…

「今日忙しかったですもんね〜、ボクも疲れちゃいましたよ。
休憩がてら、日向ぼっこしたいです…」

「やはり杏子嬢も疲れておったか。我ばかり寝てしまって申し訳ないのぅ。」

杏子嬢も寝るかの?と、聞いてみたものの大丈夫ですよ。と返されてしまった。

杏子嬢は真面目じゃのぅ。
少しくらい息抜きせねば疲れてしまうと言うのに…

「じゃあ我が無理矢理杏子嬢を連れ出すとするかのぅ。」

そう言うと蓮華は席を立ち傍にいた杏子の手を取り、受付を後にする。

「蓮華さん!ぼ、ボクお仕事が、!」

「なーに、仕事なんぞ他の者がやってくれるであろう。
息抜きも立派な仕事じゃよ、それに杏子はサボったのではなく我に無理矢理連れていかれてるだけじゃよ。」

だからサボりではないから安心せい。と、杏子にニッコリと笑って伝えてみせる。

「今日は陽がでてるから昼寝にはもってこいじゃ、絶好のサボり時とやらであるのぅ。
我の尻尾に寄りかかってする昼寝は至福のひとときじゃぞ?」

「す、少しだけですよ?」

杏子の言葉にニッコリと笑うと、杏子の手を引きながら日当たりの良い昼寝場所を探しに旅館内へと足を進めた。

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