②
昨日の夜は、案の定と言っていいのか。あとから部屋に戻ってきたシノウの話に延々と付き合わされ、寝ることが出来たのも空が少し明るくなった頃だった。
「じゃあ、ボクもういくから。
シノウもずっと寝てないでそろそろ起きた方がいいと思うよ」
「んー、わかってるって」
部屋の壁にかけられた鏡の前でローブを羽織りながら、布団で寝ているシノウに声をかける。
生徒だということを示す、白地に黒の裏地のローブを羽織り胸元のチェーンを止める。
「いってきまーす」
学生寮はアトラ魔術院の敷地内にはあるものの、広い敷地の中では移動に時間がかかるもので。
昨日と同様に、柔く暖かい風に当たりながら敷地内を移動する。
ついこの間、短く切りそろえたばかりのアシンメトリーの黒髪が風に触られふわりと、動く。
その感覚が心地よくて、簡単な魔法でも唱えたくなる。
小さく、息を吸い呪文を唱えようかとすると。不意に口を塞がれた。
「クロエ、授業以外での詠唱魔法の使用は禁止って。覚えてないのかしら?」
「オボエテマスヨ....」
「そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいじゃない、魔物でもなんでもないんだから」
はぁ、とため息を溢すのは教員であるライヴラで。
授業以外で詠唱魔法の使用が禁止されているのは知っているけれども、衝動的なモノだったのだから仕方ない。
「そういえば、課題のほうは進んだのかしら? 期限は次の講義までよ」
「まだですよ...シノウが邪魔してきてサッパリで」
「彼女確かにちょっとうるさいけどそれのせいにするのはダメよ、頑張りなさい」
期限はしっかり守るのよ、と言うと先生はふらっと消えていった。
一通り、取っていた講義を受け終えると、魔道書を含め。トネロアやハイゼンベルク地方の歴史をまとめられた書物のある魔術院の書物庫へと向かった。
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