WBS_Ss 紅い彼

心地よい風によって運ばれてきた、ここ最近嗅ぎなれた匂いによってロアは目を覚ます。

今の時間は防衛科にある数少ない座学の時間で、ロアは案の定サボって学院内の日当たりのいい場所で居眠りをしていた。

「どうせ授業に出ても寝ちゃうんだから、どうせなら暖かい所で寝たいもんねぇ…」

あくびをしながら誰に言う訳でもなく溢れた言葉は、目を覚ました時と同様の心地よい風によって消えていった。

昼寝をしていた狼の姿のまま、あと少しで授業が終わりそうな学院内を歩く。
目指すは高等部の防衛科が授業を行っている場所だ。

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「いたいた、ゲイルくーん。」

高等部が授業をしていた教室につく頃には丁度授業も終わっていて、先程の静かな学院内とはうってかわり人々の会話が聞こえる。
狼の姿からいつもの人の姿に戻ったロアは、目当ての紅い目立つ彼にへにゃりと笑いながら手を振り声をかけた。

「ロア先輩、どうしたんですか高等部の場所に来て。」
「いやー、お昼寝しちゃうくらい天気がいいからお散歩しないかなーって思って。」

チラッと自分よりも背の高いゲイルの顔色を伺いながら声をかけてみる。

「次の授業までなら、いいですよ。」
「わーい!やったー! ロア行ってみたいところあったんだよね〜、いこいこー!」

ニッ、と尖った歯を見せながら笑う彼の返事に嬉しさいっぱいのロアは大きな尻尾を揺らしながらさっそくスキップで学院内へと歩きだした。

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