NOW AND THEN

その企画について初めて聞いたとき、何て素晴らしいことなんだろうと、思いました。

ある程度の怒りを込めて「卒業」していた時期を経て、ここ数年、くるりとはおだやかに繋がれる感じになっていました。

メンバーチェンジや彼らが京都へ拠点を移したことに、何だか遠い存在になってしまった、私が最高に楽しい時間を過ごしたくるりとは別のものになってしまった、まあ、私の気持ちも変わったし…等と思いながらも、坩堝の電圧は新宿タワレコのインストアイベントにも行き、普通に購入をして聴いていましたし、その後しばらくして「変な新曲」として披露されたLiberty&Gravityはかなりのお気に入りでした。THE PIERも勿論買っています。

昔とは違うけれども、適度な距離感で付き合えるようになったのかな。

ライブの聴き方もずいぶん変わりました。昔は少しでもステージの近くへ行きたい、「前へ前へ」と思っていました。そうすると当然視界は悪くなってステージ上もほとんど見えないし、聴くコンディションとしても悪くなる、でもその悪循環の中で、少しでもステージ(特に岸田氏)を見たいと思っていました。それが、無理をせず聴きやすい場所で、という感じになり、さらにあまり「見る」ことにも固執せず、「聴く」に集中するようになりました。

今はかなり長い時間目を閉じて聴いています。そうすると、やっぱり彼らの音はすごいし、私があんなに好きだったのはこれがあったんだからなんだよな、と感嘆させられます。


NOW AND THENはまさに理想の企画でした。

まず、私がファンになる前、リアルタイムでツアーを体験できなかった時代を体験できるということ。しかも、それが、アルバムの曲順に完全再現されるということ。

くるりは、アルバムを冠したツアーをしていても、それ以外の時代の曲をうまく取り込んでいて、それが好きなところでもあるのですが、全曲を順番通りに聴くというチャンスはほぼありません。

また、私は曲を聴くときはシャッフルをせずにアーティストが成形した順番通りに聴くことにしています。それは、その並びに大きな意味があり、それをそうした作り手の思考経路や製作過程を尊重したいし、想像するのが楽しいからです。ライブの場には独特のダイナミズムがあるので、一般的にはCDとは違った配慮や意図でセットリストが組まれているはずですが、だからこそ、ライブで「アルバム全曲を曲順通りに」というのがどんなことになるのかを体験してみたかったのです。

加えて、特に初期の頃の曲達は、一番くるり熱が高かった時期に尊敬の念を抱いて聴き大切にしていた部分でしたが、定番曲以外はなかなかライブで聴く機会もなかったので、是非聴きたいという思いがありました。


そんなこんなで、vol.1もvol.2もワクワクしながら公演を待ち聴きに行きました。いずれもとても素晴らしく思う存分楽しむことができました。

vol.1は、告知されていたように、さよならストレンジャーと図鑑をきちんと忠実に再現する公演でした。発売時は20代前半だったくるりが40近くなり行う再現です。この間に色々なことがあったでしょう、精神的にも、そして何より技術的にも、これまで着実に音や演奏を積み重ねてきた歩みやキャリアを感じさせる、深みや円熟味を増した今のくるりが「昔」を通して語りかけてくるというのはなかなか不思議な感覚で、本当に貴重で贅沢な場でした。曲としては、ピアノガールにノックアウトされて、しばらく脳内再生が止まらなくなりました(笑)

vol.2は、わりとざっくりな再現でした。演奏されない曲もありましたし、まとめて演奏された曲もありました。TEAM ROCKは打ち込みサウンドが多いので、ライブだとどうなるんだろう?と思っていたのですが、おお、そう来たか、そうか、うんうんかっこいい、くるりはやっぱりこうだよな、だから好きなんだよな、という感じで、改めて演奏力に魅せられました。そして、まとめ演奏のミックスはまさに圧巻で、トリップ状態になりました。曲としては、LV30はやっぱり最高!と思ったのと、え?もしや歌わないの?とそわそわしていた中聴けたカレーの歌、他の会場では歌わなかったという迷路ゲームを聴けたのが特に嬉しかったです。

そして・・・いよいよvol.3に続きます

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