0506年越しの衝撃

もしSINGER SONGERのツアーがあったのなら、私は何としてもそのチケットを確保しようと躍起になっていたと思います。
しかし、その機会はありませんでした。

彼らはSINGER SONGERとして夏フェスには出演していたのですが、当時の私にはまだフェスに行くという概念がありませんでした。

そして、そのたった1回だけ、SINGER SONGERが出演したイベントを体験してきた友人がいて、くるりもCoccoも別に特別ではないその人の話に私は猛烈に嫉妬しました(笑)
  結局私はSINGER SONGERとしてのライブを体験することはできません  でした。残念。


その後、Superstarが発売になり、それがどうしようもなく好きになった私はいつしか、くるりについて語り「くるり好き」を自称するようになっていました。当時使用を始めたSNSにも、くるりについての記載が多く残っています。(見返したらちょっと懐かしかったけど恥ずかしかった。)


ある秋の日、先の友人が「くるりも出演するし、年末のフェスに行かない?」と声をかけてきました。
私は勿論くるりを観に「行く」と返事しました。


それから間もなく、NIKKIが発売になりました。

私にとってNIKKIは、くるりで初めて発売を心待ちにし、発売と同時にいさんで買いに行き、帰宅と同時にすぐさま聴き込んだ思い出のアルバムです。

Superstarもそうなのですが、爽やかな少しPOP寄りのサウンド(SINGER SONGERの曲もですね)が、当時の私にはすごくツボで、本当に食い入るように聴き込んでいました。同時に、それまであまり聴いていなかった過去作品も聴き始めました。


そして、準備万端状態で迎えた2005年の12月31日。

当時はまだロキノン系のアーティストのこともあまり知らなかったので、年越しまでに誰をどのように聴いたのかの記憶があまり無いのですが、確か直前がPUFFYだったのかな?そこをゆっくり聴いていたい気もしていたのだけれども早めに退出して、EARTH STAGEへ向かいました。

そしてドキドキしながらくるりの登場を待ちました。


実は、この後のことを詳しく書きたかったのですが、うまく思い出せないのです。

当時のSNSを見ると、ライブ終了直後に「くるり最高!」「しげるくん最高!」「ありがとーーー!」みたいなやたらテンションの高い書き込みをしていて、その後でレポを上げるという記載がありました。そして、少し時間を置いて「やっと書き終えた感想をアップしようとしたのにエラーで全部消えてしまった」「長文過ぎてだめだったんだろうか」「ショックすぎる」という内容の書き込みが残っています。

今ではライブ中のことよりも、会場でトリのレミオロメンまでの間にと、携帯でめちゃくちゃ興奮しながら長い感想を打ち、よし書けた!アップするぞと投稿ボタンを押した後にそれが全て消えてしまった時の落胆のほうが具体的に思い出せるというのが皮肉なものです。

…そんなこんなで、あまり具体的には思い出せず、記録も残っていないのですが、とにかく、このくるりとの年越しライブは、その後の私と音楽との繋がり方を大きく変えるものとなりました。


私は幼少期から音楽に触れ、絶対音感もあるため、音を聴くのが不自由なところがあります。音程が外れれば気になってしまうし、技術的に荒いところにも煩わされてしまいます。

この頃邦楽に着地するまではずっと洋楽ばかり聴いていて、ライブにも色々行っていたのですが、

音として聴くはCDの方が煩わされなくていいし、

会場に行っても、確かに好きなアーティストはそこにいるんだけれども、

ライブハウスではもみくちゃにされ落ち着いて見ることはできないし他人の汗や感触が気持ち悪い

大規模会場では見えても米粒ほどのものだし…

と、まあたまにはこういうのもアリかもしれないけど、家で落ち着いて調整されたCDを聴くのがいいやと思っていました。


しかし、それが、くるりの年越しライブで見事に崩れ去りました。音を立てて壊れていくようでした。

場所はどの辺で聴いていたんだろう。あまり覚えていませんが、わりともみくちゃになったので、フロントエリアかその周辺だったように思います。

初めて、もみくちゃにされても、他人の汗がついてもいいや(本当は気持ち悪いけど)、それでも本当にこの場にずっといたい、終わらないでほしいと強く願いました。


この日のライブの中で特に強く印象に残っているのは、まず、それまでがわりと早く進んでしまったからと年越しまでの時間調整で演奏を引っ張っていた「Morning Paper」です。その迫力とかっこよさに打ち抜かれました。

次に、そこでボルテージが最高に上がったうえでの「WORLD’S END SUPERNOVA」。じりじり迫る0時を明確に意識しながらのあの曲、あの空間は危険でした。トリップ状態になりました。

そして迎えた年越しの時。大好きなバンドと同じ空間で最高の新年を迎えられた嬉しさが身体中に染み渡るようでした。「好き」がそれまでの「好き」とは全然違うものになった瞬間だったのかもしれません。

その後の「お祭りわっしょい」はもう、完全にお祭り状態でした。周りも自分も。そんなことは初めてで、でも、何だかよくわからないけど、それでもめちゃくちゃ楽しくて幸せで最高ーーー!!!という感じでした。


この日のセットリストは、フェスのクイックレポを参照すると“Ring Ring Ring”、“ロックンロール”、“ハイウェイ”、“ばらの花”、“ワンダーフォーゲル”、“Morning Paper”、“WORLD’S END SUPERNOVA”、“お祭りわっしょい”だったようです。

前半の記憶があまりなかったのですが、おそらく「Ring Ring Ring」でいきなり盛り上がって、その後の「ロックンロール」「ハイウェイ」では、だらだら涙したような気もしてきました。おそらく、ライブで泣くのはこの時が初めてだったと思います。


何だろう。

全体的に音と歌詞と自分とアーティストが初めて繋がった、通った感覚を味わったのだと思います。

くるりは演奏の力がしっかりしているのもあって、それまでのライブのように、ライブ中に演奏が気になるということはありませんでしたし、むしろCDよりも迫力や厚みや熱量のある演奏にぐらりと揺さぶられました。

え、何これ?どういうこと?という戸惑いが初めはありました。

それがしばらくすると、じんわり温かい感覚となり、音に酔えるようになりました。

そして、その体験をしたのが、年越しという特別な瞬間だったのも良かったのかもしれません。

言葉にすると安っぽくなってしまいますが、本当に信じられない夢のような時間でした。特別、格別でした。


そして、こんな体験をしてしまった私はその後、くるりやライブの虜となっていくのです。

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