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妄想には社会を変える力がある

妄想=恥ずかしい?

妄想するのが癖だ。昔からそうだった気もするけど、大人になってからの方がさらにその傾向にある。理想と現実のギャップに直面する機会が増えたからだろうか。

最近はもっぱら仕事に関する妄想が多い。「行きたい時に行きたい土地に行って、一定期間そこで仕事できるようになればいいのに」、「通勤しないで働けたらいいな」、「週5~6勤務が当たり前でなくなればいいのに」とか、そんなことを考えている。リモートワーク、二拠点生活、そんな言葉も身近になった現代では、実際にそういう働き方も仕組み上は可能だろうけれど、組織(それも結構保守的な)勤めの私の周りでは、やっぱりそれはちょっと夢物語ではないけれど、選ばれし一部の人間に許される話だ、みたいな風潮がある。

技能の有無や職種を問わず、いつか広く世の中の人が、自由な働き方ができる世の中になればいいなという妄想がはかどる。しかし、職場の人にそんな話をすると「若いなあ」みたいな生暖かい目で見られるし、だんだん自信がなくなってくる。「理想」という言い方もあるが、自分の置かれている現状から考えた実現可能性の低さという意味では、たしかに「妄想」に近いのかなと、そんな気がしてくる。

そんな妄想は甘えなのか、自分が子どもすぎるのだろうか、と思っている時にたまたま書店で手に取ったのがこの本だった。

「直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN」(佐宗 邦威 著:ダイヤモンド社)

妄想の持つ可能性

「論理」「思考法」なんて書いてあると、ちょっと難しそうな本のようで構えてしまうが、目次に「妄想」という言葉があって親しみを感じたので、とりあえず買うことにする。

この本では、妄想を駆動力とした「ビジョン思考」を提唱している。妄想を妄想のまま留め置いては意味がなく、単なる空想家で終わらないためには、直感を論理につないで、妄想を戦略に落とし込む作業が必要だと言う。なるほど、妄想は、一定の思考を通せばどうやら有意義なものになりえるようだ。

とはいえ、凡人が思いつく程度の「妄想」に、何かを生み出せるだけの力があるのだろうか。それについて著者はこう言う。

「99%の凡人(とくに僕のようなもともと頭が固い左脳型の人)にとっては、『ひらめきとはどこかからいきなり降りてくる』というのは幻想だ。むしろ、『凡庸なビジョンに見えるものにこそ、宝が眠っている』と気づくことから、すべてがはじまるように思う。」(「直感と論理をつなぐ思考法VISION DRIVEN」173ページより引用)

ただの妄想で終わらないために

自分の妄想だって、何らか可能性を秘めているのかもしれないと思うと、なんだか勇気が出る。では、妄想を妄想で終わらせないためにはどう行動したらよいのか。

本書においては、ビジョン思考を身につけるために必要な「時間的・空間的余白」の作り方や、思考のメソッドが数多く提示されている。妄想を引き出す練習から、一定形になった妄想を表現する方法まで、段階ごとにメソッドを教えてくれるので、自分でも取り組めそうだと思わせてくれる。

時に周りから笑われるような「妄想」だって、決して無駄なものではない。ビジョン思考を身につけることで、妄想は現実につながっていくし、ひいては社会を変えられる可能性だってある。そんな気持ちにさせてくれる本書は、周りには言いにくい、でもいつか叶えたい妄想を抱いているあなたにぜひおすすめしたい一冊だ。


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