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仏教を知るキーワード【03】中道 ~左右の中間ではなく、超越した道~

快楽によっても苦行によっても何も得られないと知ったブッダは、第三の道を説いた

中道とはブッダが菩提樹下で成道された後に、最初の説法(初転法輪)で説かれた教えである。

当時のインドには、盛大な動物供犠などを通して神々や祖霊の世界に働きかける現世利益のバラモン教、激しい苦行によって輪廻からの脱出を願う様々な沙門宗教、という2つの大きな宗教の流れがあった。

王家の身分を捨てて出家したブッダは、後者の沙門宗教の伝統に身を置いて6年にわたって苦行に専心したが、心の安らぎは何一つ得られなかった。そこで新たに「中道」という方法論を見出し、自ら実践することで無上正覚に達し、ブッダとなった。苦行こそが修行と考えられていた沙門宗教の世界において、中道は誰も知らない「異端」的な方法論だった。ゆえにブッダはまず、自らが完成した中道について修行仲間にプレゼンする必要があったのである。

ブッダは、出家者・修行者が実践すべきではない極端行を2つ挙げる。1)五欲で体を楽しませる(眼耳鼻舌身から入る情報にふける)快楽の道。これは俗世間の普通の生き方に他ならない。2)自分を虐め苦しませる道、いわゆる苦行である。どちらを歩んでも何も得られないと、ブッダは強調した。

贅沢にふけらず、苦行に陥らず、どんな道を歩めばよいのか? そこでブッダは「私は極端行をやめて、どちらにも入らない中道を発見した」と宣言した。これは「極端行を捨てて、新しい解決策を見出した」という意味である。「中道」は決して、左右の中間、ほどほど、中庸、などではない。中道はむしろ「超越道」と理解されるべき第三の道だ。ブッダは中道の実践法として「八正道」を説いた。その各項を調べれば、中道とは「超越道」たる所以も明らかになるだろう。

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

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