貧しく豊か

三人の若者が六畳あるかないかくらいの小屋で
ロウソクを灯して正方形のテーブルを囲んでいた

ロウソクの灯りを頼りに2人はギターを奏でて
もう1人は手紙を書いていた

手紙を書いている人がこの小屋の主だ

ギターを弾いてる2人は
今日の昼過ぎ
鈍行列車を乗り継いで訪ねてきた友人だ

彼 彼女らは何を話すでもなく
その空間に空気のように存在した

家族の中にはない
満員電車にはない
テレビの中にもない
携帯電話の中にもない

小さな空間に充満する穏和な空気
当たり前のように愛されながらそこに存在する

こんな空間は探したって見つかるものじゃない
作ろうったって作れるものじゃない
誰とでもできるわけじゃない

そっと寄り添い抱きしめるように
それぞれがそれぞれに想いを温めている

いつか帰る場所がなくなった時
これを求めていたんだと心が微笑む

心は豊かに貧しく  謙虚に  
小さな人でありたいと願う

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