アートを「愛のあるお金」にかえた、とある個展の記録②(実践編)

前回の記事では、わたしたちが仮装通貨「U$A(うさ)」という仕組みを発想するまでの経緯を書きました。今回はその実践の場として2018年の晩夏に開催した、渡辺望未個展「いいこわるいこプロジェクト」について紹介します。

ホホホ座へようこそ

京都市の左京区に、ちょっと不思議な本屋さんがある。
その名も、ホホホ座。名前からして怪しい。

そのお店の隅っこ、「もう突きあたりかな?」というところに、さらに奥へと進む通路がある(正確にいえば、通路というより物置っぽい)。

そこを抜けると現れる、12畳ほどのギャラリー。2018年の夏の終わり、その場所でわたしは「いいこわるいこプロジェクト」を開催した。

まずは展示の様子を4つのポイントで紹介しょう。

①公開制作
ギャラリーに入るとまず、わたしが公開制作している姿が目にはいる。来場者に等身大の作家を見てもらうことが、この企画では大事だと思ったからだ。

②さんかのてびき
ちょっとふしぎな企画なので、来場者を混乱させないよう「てびき」を配布した。順を追って質問に答えるうちに、この企画を自然と体験できる仕組みになっている。仮装通貨「U$A」についても、かんたんに説明した。

③メイン展示
この展示には目玉になる大作はない。無数の「いいこ」と「わるいこ」の絵で構成される空間。その中ですごす時間を含めて作品としている。

先ほどの「さんかのてびき」の手順①では、この中から「好きな作品を選ぶ」ことを提案した。

遠目ではおなじように見える「いいこ」と「わるいこ」だが、よく見るとそれぞれに表情がある。それらを見くらべて選ぶことで、作品と向きあい、自分と向きあう時間がうまれる。それが、この展示の楽しさのひとつ。

みんな真剣に悩んで答えてくれた(ありがたい)。

④その他
ほかにも、「いいこ」と「わるいこ」をかたどったクッキーの販売、アニメーションの上映も展示のひとつとして配置した。

以上が「いいこわるいこプロジェクト」の展示の様子だ。より詳しく知りたいかたは、わたしのInstagramホホホ座のサイトにて、開催当時の投稿をご覧いただきたい。

さて、ここからは仮想通貨「U$A」の説明に移っていこう。

最後に「愛情を包む」という提案

前半で紹介したように「いいこわるいこプロジェクト」では、来場者が自然なアプローチで作品や作家と出会い、向き合えるような工夫をあちこちに施した。

そうして展示に参加し、なにか愛情を感じた人に最後に提案する選択肢。それが、仮装通貨「U$A(≒ポチ袋)」で「愛情を包む」ということだ。

以下、わたしたちが実際に用意した「U$A」の仕組みを4つのポイントで説明しよう。

①会場内での丁寧な案内
まず、入口正面のカウンターに「U$A」の実物と「説明書」を並べ、わたしから口頭でも案内した。

さらに、前半で紹介したように「さんかのてびき」でもその存在を伝え、以下のようなお願いを記載した。

当プロジェクトでは、「だれもがアートを通して愛情をやりとりできる世界」を目指して「U$A(≒ポチ袋)」を発行しています。あなたが今回の展示に少しでも愛情を感じたなら、ぜひその気持ちを包んで作家にお渡しください。

なお、実際に使用した「さんかのてびき」や「説明書」のPDFデータを、次の記事(結果編)の有料パートに添付している。おなじような仕組みを試したい方は、ぜひ参考にしてほしい。

②えらべる2つの「U$A」
今回は用途別に2種類の「U$A」を用意した。

「ちびU$A」は少額のチップ用。作品の購入はせずとも支援したい、という気持ちを包むことができる。こちらからは、ささやかなお返しの品を渡した。

「でかU$A」は作品の購入用。買い手が作品の値段を自分で決めて購入できる。今回はカジュアルな作品なので、その場でかんたんな額装をしてお持ち帰りができるようにした。

こちらが実際の「でかU$A」と「ちびU$A」だ。

③たのしいお返し
お返しの品として配布したのが「パタパタえほん」。

紙工作ができるポストカードだ。組み立てると、こんなおもちゃができあがる。これが思いのほか人気があり、これ欲しさに「ちびU$A」をつかってくれる人もいた(こちらも次の記事の有料パートでダウンロードできます!)。

④ひと手間かける作品販売
前半の「さんかのてびき」にしたがうと「好きな作品を選ぶ→でかU$Aで愛情を包む」という流れで、買い手が自然に作品の値付けをできるようになっている。

こうして作品の購入までたどりついた方には、すこし時間をいただき、目の前で額装して手渡すのを基本とした。こうした手順を踏むことで、作品とお金の交換がたんなる消費活動ではなく、コミュニケーションの一部になることを目指したのだ。

気になる結果は…

このようにして、わたしは個展「いいこわるいこプロジェクト」を開催し、そのなかで仮装通貨「U$A」というアイデアを実践した。

はたして、来場者の反応はどうだったのか?

わたしたちはアートをどれくらい「愛のあるお金」にかえられたのか?

次回は、その結果について書いていこう。

(つづく)


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atelier ザワザワ荘

渡辺望未(わたなべのぞみ)/びわ湖の近くで生まれ育ちました。パン屋で働きながら、絵を描いています。

アートを「愛のあるお金」にかえた、とある個展の記録

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