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崩れたトマト

今日は出勤すると思ったSさんが出勤しなかった。

先週、来週の予定はわからないと言っていたけれど、
さよならやありがとうを言えず、そのまま去っていったのは
とても残念だった。

サバサバしてクールビューティな彼女はいつも隣の席にいた。
隣が空いていると「ここ空いてますよ」と、
いつも教えてくれたので、何だかんだと隣にいた。

私に前向きさや仕事の姿勢を教えてくれたと思う。
趣味を聞くとキャンプだと言うので、もし可能であれば誘ってほしいと
お願いしてたが、連絡先を教えそびれたのでもうご縁はないかもしれない。

会話の中で家の近くの農家でとれたトマトの話をしていたので、
最終日だと思ってトマトを買ってあったのを持って行ったが、
彼女はいなかった…。
別の子が今日までと言う事だったけど、彼女にあげたかったトマトを
持ち帰ることにした。

帰りの電車を降りた後、エコバッグの下の部分が濡れていた。
お茶が漏ったのかと思ったが、トマトがつぶれて汁が出ていて崩れていた。
私の他の荷物でつぶれてたのだが、気持ち的にトマトの汁で涙を流したような気がしたのだった。涙で濡れたような跡がパンツの太もも部分に残っていて冷たかった。

一期一会だからご縁を大事にしたいなって思っただけに疎遠になってしまうと思うと残念だ。
まぁ、それがご縁かな。
あくまでもこの仕事の同僚として見たのかもしれないし。
そのトマトは私が食べるとしよう。

このトマトは哀しくもやはり美味かった。

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