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ローラの憂鬱 その2

私はビリオネアの主催する奇妙なパーティーに何度か出席する機会があった。それは非常に異様な雰囲気を秘めたパーティーであり、参加者の皆がビリオネアに見返りを期待しているような、何やらあからさまにいやらしい目をしていた。このような目をしていなかったのは、彼の家族と、どこかの国の政治家くらいのものであった。彼の家族は一目見るとわかるくらい、ダイヤモンドまみれであった。パーティー会場の光が反射して、目が痛いくらいまぶしい。耳たぶのダイアモンドがあまりにも重そうで、耳がちぎれないかが心配になるほどである。このような富にあふれていても、10歳ほどになると見える息子には笑顔のかけらもなかった。ビリオネアは私に言った。「息子のことは、どうでもいいんだよ」。それから彼は嬉しそうに今日の新入りの美女の体を眺め始めた。私はふとローラの様子を伺ってみたが、いつにも増して目が死んでいた。毎日豪遊するがいつまでも満足に至らないビリオネアとその家族の生活をみることにウンザリした目。そして、そんなお金の匂いを嗅ぎつけてよってきた下心丸見えの人々に呆れたという目をしてた。こんな生活を毎日続けていたら、私もこのような目になってしまうのであろうか。そして、彼女がいつもパンツ・スタイルなのは、美女達のスーパーミニスカートに対する彼女なりの抗いなのであろうか。

美女軍団の多くは他のヨーロッパの国で比較的いい職についていた。中には会計士、弁護士、医師なども存在したのである。彼女ら曰く、バケーション気分でロンドンにやってきて、お金を稼ぎ、超セレブ会の仲間入りができるということで彼女らは喜んでやってきていた。中には、もうこれで5回目というリピーターの方もいた。そのようにして会話を楽しんでいると、彼女たちがその晩にビリオネアとベッド・インするという事実をついつい忘れてしまう。夜になると裸の美女5人が高級シャンパンを片手に、ビリオネアの邸宅にあるプールを泳ぎ回るのだ。

パーティーの終わりは突然に訪れる。ビリオネアがパチっと指で音を鳴らすと、今まで楽しく話していた美女達の顔から笑顔は消え、さっとショールをまとい、リムジンへと乗り込んでいくのである。少しでも遅れたときには、ローラがまるで物を詰め込むかのように美女達を押してリムジンへと乗せる。こうしてローラの奇妙で長い一日は、ようやく終わり、彼女は夜遅くに家に帰って息子の寝顔を眺めるのであった。彼女が「モノ扱い」しないのは、自分の息子だけなのかもしれない。


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