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愛の深さは幸福に比例するか

 道ばたの紫陽花がきれいだったので一枚(=゚ω゚)ノ

 Sくんと一緒にキャンプ行きたいなあ。おれバーベキューって舎人ライナーで行ける足立区のキャンプ場でしかやったことないんだけど、東京は空気が汚れてるのと地上の明かりが多すぎるのがあって星がほとんど見えないから、泊りがけで行くなら、おれも満天の星が見えるくらい空気の澄んでるところがいいな。どうせ食べるならおいしいご飯が食べたいよね、別にコンビニ飯が嫌いなわけじゃないけど……外で食べるのもいいけど、いつもSくんにおいしいもの作ってあげたい。Sくんの味の好みとか食材の好き嫌い覚えるのもそうだけど、料理の勘を取り戻して、もっともっとレシピ覚えて腕も上げなきゃ。
 おれはSくんと出会って以降が人生で一番幸せなんじゃないかって思うよ。

 写真を見ても4年前より今の方が健康的になってるって他の人が書いてたけど、やっぱ一番大事なのはSくんがいつまでも元気でみんなと遊べるようにすることだよなあ。おれは人間関係や自然な心情を制限する気はないし、必要な制限は本人が必要と思う部分だけでいいし、そこは任せる。Sくんの幸せのこと、あの子の精神の自由も含めた生命のことを考えるなら、おれはSくんのクランのためにもできる限りのことをして、クランの人々にも相応に幸せになってもらう必要があると思ってる。
 それでもやっぱりおれがあんまり他の人と仲良くしすぎると不安になるみたいだし、それがあの子自身の近くにいる人だとその人への当たりが強くなるかもしれないし(そしてその心情は自然なものと言えばそうだから責めることはできない)、おれは自分を制限してうまくいくならそれでいいと思ってるけど。おれができること・すべきこと・望むことで一番大事なことは、精神面でも日常面でもSくんその人を支えることだと思ってる。し、たとえ誤解とかだったとしても、Sくんのメンタルを乱すような行動をおれがとるのは良くない。仕事とか人間関係とか、他の全部に良くない影響が出ちゃうから。

 ……そういえば、春限定の演出「たんぽぽとクラゲ」って5月末でイベント終わっちゃってるけど、すみだ水族館ってクラゲいるんだね。Sくんクラゲ好きだからそのうち見に行きたいなあ。あと上野動物園も、6月4日から人数制限して5か月ぶりに再開したね。なんか一日2000人だか5000人だかまでしか入れないって、入場を予約制にしたみたいだけど。
 Sくんと動物園or水族館デートしたいなあ。ちょっと遠出して栃木の那須自然公園でも大阪の海遊館でもいいけど、都内だったら……おれの家の近所だったら、上野動物園とかスカイツリーそばのすみだ水族館とかかなあ。おれ上野動物園の前門までだったら家から歩いて15分で行けるかんね。……デートしたいなあ。今はSくん死ぬほど忙しいからライブ以降だろうけど。とりあえずは都内で検索かけてなんか候補地とそこの開催イベント調べよう。こないだのどこに行きたい、何がしたいっていう話が楽しかったから、会えない時間はデートコースで妄想を膨らませるよ。どのみち感染の可能性が低い候補地に絞ると今はなかなか難しそうだものね。映画館デートだったら観客喋らないし密にもならないし感染の可能性は低そうだから大丈夫だろうけど。
 Sくんと一緒に何かするとしたら、おれは何したいかなあ。うーん、とりあえず、一日デートしてお互いに心がほぐれたら楽しい夜を過ごしたいけど(定期)。おれはわりと俗な欲望も持っているけど、Sくんそういうの拒絶するタイプじゃないし安心はしている。

 そうね。Sくんの顔つきは男の子、って感じがする。課題が多いと思うのは、課題が明確だから余計にそう感じるんだろう。気ままの中の不変、自分自身の法則を知ること……全ての感情が、甘く、苦く、切なくていとおしい。君とどう生きるべきかを考えよう。どうしていったらいいのか。今はまだ決めない方がいいことが多いとしても、おれたちがおれたちである限り、必ず立ち現れるだろう課題を選定しておくのは悪いことじゃない。予め芽を摘んでしまうのではなく、対策を考えておく。良いことも悪いことも、楽しいことも苦しいことも……君と一緒に歩いていく世界は輝いている、そう思う。
 おれたちはこの世界で生きることを許されもし、機会を与えられたんだ。善も悪も含めた生命を与えられ、人生を拒否しなかった。そうじゃなきゃ、出会ってすらいなかったろう。すべての悲しみに答えがあるなら、誰か一人の手を取ることを選ぶべきなら、おれは君と歩いていきたい。おれが君の支えであれるなら、それは何よりうれしいことだ。おれはSくんに自分の欲求を抑えることを望みはしないけど、自分の望みを実現させて実際に人生に組み込んでいく筋道のために整合性チェックは続けてほしいと思う。同時に二つの体は持てないし、二つの人生は夢の中でしか生きられないから。

 まあ、別におれはSくんの外見で好きになったわけじゃないからな。弱いクリボーからコインを巻き上げない、弱い者いじめをしない心の芯の強さかなあ、惹かれるきっかけになったのは。あと、傷つきやすい感受性の鋭敏さ・繊細さに支えられた柔らかい(押しつけがましくない)優しさと、正直さと潔さ、あったかくて気まぐれなとこが好きなだけで。おれは心に一本筋が通ってる人、はっきりものを言う人が好き。そういう人の方がおれは迷いなく関わりやすいし、話をしていても気持ちがいい。
 おれはSくんのめんどくさいところ好きよ。生きてる人間相手にしてるって感じがするから。多分おれは生きてる人間が好きなんだよ。君にとってもおれが楽しければいいな、とは思うよ。
 おれの心の深さが、君ならわかる気がするから、おれは君のそばにいたい。おれは君の痛みがわかるから、絶対に君を裏切らない。おれにはSくんさえいればいいよ。昔の悲しいことを思い出しても、Sくんの心を深く理解しなおせる気がするから苦しくても苦しくない。おれ、小学生の頃からずっとこの世界で独りきりだと思ってたけど、一人きりじゃなかった。君がいる、って思った。どうにもならない痛みの深さも、君と世界を分け合うためだったら悲しくない。
 世界は二人だけで構成されているわけではない、でも……世界に迷い込んでいくとき、おれはいつもこの社会は浅い夢に迷っていることを思い出して、冷たい風を胸の中に吹き込むような思いがするんだ。見ている深さが違う、感じている深さが違う、と。でも、君にならおれの宇宙を分けてもいいと思った。
 もしおれが君より先に死んだら肉の一欠け血の一滴まで残さず食べるか、遺灰をダイアモンドに加工してずっと持っててほしいな……。

 でも、Sくん、心は疲弊してないけど肉体的には疲弊してるって言ってたな。肉体的な疲弊は感受性をすり減らすからな、おれが考えるにSくんの最大の武器は現実を感じ取る感受性の鋭敏さだし、そこがすり減り制限されるといろんな面で迷いや不安が生じるんじゃないか……休めないのはわかるけど、心配。
 先々週の配信ライブも朝から家に帰ってくるまで何も食べてないって言ってたし、殺人的な忙しさだよなあ。おれも大学時代ご飯食べる暇なくてほぼ歩きながらのコンビニおにぎりで済ませてたなあ。めっちゃお腹減ってるけど作る時間も買いに行く時間もないときとかは牛乳飲んで抑えてた。本当はおれがお弁当とか作って持たせてあげられたらいいんだけどね、……今の状況では難しいし。持ち歩きやすい飲み切り180mlとかのパック牛乳お腹に入れるだけでも違うし、お腹の鳴りも少しは抑えられると思うから、家の冷蔵庫に多めに常備しとくといいかも?……本当はちゃんとご飯食べてほしいけど(ウィダーインゼリーとかはね、短い時間ならあれでもいいかもしれないけど、Sくんが味好むかわかんないし、なにより牛乳よりあんまり腹持ちしないんだよね)。

 あと、ドライアイと眼精疲労か……明るい晴れた日に眩しくて目の奥が痛いって言ってたけど、スキーでの雪目みたいなもんかなあ、あれもなりやすさ個人差あると思うけど。暗い場所からいきなり明るい場所に出て、明順応で瞳孔狭くならないうちに太陽や反射の光を見ると、おれも目が痛くなる。もしSくんが昔からそうで、サングラスで防げるならそれで大丈夫な気がするけど。でも……Sくんがもし昔からそうじゃなくて、最近いきなりそうなって、っていう話だったら、どっか(角膜より奥の、下手すると視神経につながる感光部の細胞とか。網膜だったかな、なんかもっと細かい部位の分類なかったっけ、名前忘れた)が炎症起こしてるかもしれないから眼科行って診てもらった方が良いよなあ。角膜が傷ついていてもそうなるよね、光刺激を受けただけで痛くて涙が出てきたり、おれも小学生の時、角膜表層の軽い傷が原因でなったことあるからな。
 もし虹彩の色素が薄いから(昔から)痛いんじゃなくて、炎症や傷があるから(最近になって)痛いなら、早めに眼科行って点眼薬もらうと治り早いし予後がだいぶ良いからそうした方がいいと思うんだけど、Sくん忙しそうだけど時間あるかな。ドライアイと眼精疲労……おれがこないだ入院していた医科歯科大学附属病院の看護師さんは、目が悪い人はみんな夜勤の時はドライアイがひどいからと言って眼鏡にしてたけど、やっぱりコンタクトレンズは長時間着けっぱなしだとドライアイになりやすいみたい。そこから角膜が炎症や傷つくとかもあるのかな。
 でも、Sくんは(視力の具体的な数値はわからないけど)かなり視力が悪いみたいだから、たとえカラコンをやめても、眼鏡をかけられない舞台やモデルの仕事ではコンタクトで過ごさなければならない。かといっていちいちコンタクトを着けはずしすると、爪で角膜表面を傷つける機会も増える……花粉症の時期だと角膜に炎症を起こしやすくなるからできるだけコンタクト外してた方がいいと思うけど、パソコンに向かう時間が長いとか生活習慣から来ている部分もあるだろうし、それが心理的なバランスをとることに由来する部分もあるし、Sくんの仕事で動かせない部分もあるから、難しいね。
 だけど検査しないと表面が傷ついてるとか炎症あるとかわからんし、角膜の傷や炎症だと(もしそうなら主原因はコンタクトレンズの長時間使用だと思うけど)失明につながることもあるし、おれもちょっと気になるから早めに眼科受診してほしいなあ。

 あと、あれだよ。なんでSくんが暑がりか、たまに突発的な頭痛でしんどくなるか、って……。
 ヒトの全身にある皮膚の毛穴には皮脂腺と汗腺がつながっていて、ヒトはその毛穴から発汗することで体温を調節するんだけど……もしかして永久脱毛って、その体温調節の汗が分泌される汗腺がつながってる毛穴を塞ぐわけだけど、発汗機能を失くさせるあるいはそこまでいかなくても低下させてしまうのか? Sくんいつもめっちゃ暑がってるし冷えピタもめっちゃ消費するみたいだから、おれ、前からもしかしてと疑ってるんだけど……Sくんの発汗機能≒体温調節機能、もしかしてほぼ全身を永久脱毛してるから低下してる? どういう脱毛方法だかわかんないからわかんないけど考えられなくはないんだよな。
 おれも雨降りで気圧下がると頭がぼーっとしたり痛かったりするから、梅雨の時期は憂鬱(食べ物が痛みやすいのもあるけど)……それにマスクしてると呼気と熱がこもって比較的低い気温でも熱中症になりやすくなるし、おれは今年の梅雨は昼間外出するときは首筋に冷えピタ貼って行こうかと思う。
 夏が近づいてだんだん暑くなってくると、マスクしててフラっとくるよね……マスク無しならいつもまだ体感的には涼しくて熱中症にならない程度の気温でも、おれもこないだ(先月後半、27度の時に)散歩してて軽い熱中症になったからなあ。あのときは夕方から半日頭痛くてお仕事にならんかった。家の中だとまだそんなにって感じだけど、日差しのある所は暑いから、マスクしてなら12時~3時とかの気温が高い時間帯に30分とか1時間とか長時間歩くのは熱中症になりがちだし避けた方が本当はいいんだよな。でも、避けられない時があるから、冷えピタ(別にペットボトルに冷却用の水入れて、それを肌に塗るのでもいいけど)。
 おとといのSくんの頭痛も、多分気象病(低気圧で頭痛)か軽い熱中症のどっちかだと思うんだけど、おとといくらいの気圧(今日12時の東京周辺は1008hpa前後、気象庁によれば)だとおれは頭痛くならないけどちょっとぼーっとする。だから熱中症の方かなって疑ったんだけど……誰かが書いてた通り、自分がどのくらいの気圧で頭痛が出るのか、気圧感知アプリで記録付けてみるのもいいかもね(気象庁発表の天気図を見て推測した周辺の気圧を、体調と一緒に記録するでもいいけど)。そしたら原因が絞り込めて対策とりやすくなるし。
<人間の身体は、まず内耳で気圧の変化を感じ取り、交感神経が活発になり亢進(こうしん)する。交感神経が亢進すると、ノルアドレナリンという神経物質を分泌し、体温を上昇させたり、血管を収縮させたりする機能がある。>
 って記事を読んだけど、気象病(天気病)は交感神経系ね、まあそうか……。ノルアドレナリンが脳内の血管を収縮させて頭痛を引き起こしてるのか。内耳が気圧変化を感じ取って交感神経に信号を送ってるなら、耳介をつかんで耳全体のマッサージは、確かに気圧変化からくる頭痛緩和に効果がありそうだ(あと、頭痛が出る気圧のタイミングさえわかれば、どうにもならなければ頭痛薬で対処も可って話になる)。


 ……おれはSくんが欠点も含めていとおしいって思うだけなんだよな。欠点があろうと、本人がそれで困って深刻に悩んでるわけじゃないなら、おれは無理して矯正させようとは思わない。でも、やっぱ困ってることはできる限り力になりたいと思うし、必要なら適切な専門に繋げるように日々勉強しなきゃなって思うけど、その辺の基礎を叩き込んでくれた高校時代の化学と生物の先生(あと理科大時代の物理学実験担当教授)には感謝しなきゃ。
 それでも、この半年くらいずっと忙しすぎてパンクしかけてる感じだから心配だわ。忙しいのは評価されてるってことで喜ばしいことではあるけど、依頼が多すぎ・忙しすぎて一つ一つの仕事に十分な時間と労力が割けないのは……それは仕事を選んで間引きするしかないよなあ。
 時間の問題で中途半端にしてしまうと、自分でも不完全燃焼感というか不満が残るだろうし、クライアントの方でも安易な仕事をするやつだって評価になってしまうだろうし。おれも今まで三回くらい過労で倒れてるから選別の大事さはわかるけど、次につなげる、その次をどういうものにしたいかいくつもある可能性の中から選ばなきゃいけない時期に来ているのか。Sくんがこれ以上忙しくなる前に、まだ舞台の仕事に労力を回せるうちにSくんの生の舞台観に行きたいな……。マネージャの助けがあるとはいえ、最終的なスケジュール管理は自分にしかできないからなあ。だって先をどうしたいか将来の展望を持っているのは自分だし、(君は売り出しのため労力を割かなきゃいけない時期は過ぎていると思うけど)流行りや環境に合わせていくとしても折り合いをつけるのは自分だし。

 そういやおれ一週間くらい前の夢で、自分の仕事が忙しくなりすぎて、Sくんとの大事な何かの記念の待ち合わせに遅れて、急いで待ち合わせ場所に向かってる途中でメール連絡も忘れて遅れちゃったから「新しい人とよろしくやってれば」って追信が入ってすねられてたよ……めっちゃ一所懸命Sくん探したけど、おれが遅れすぎて帰っちゃったのか、待ち合わせ場所間違えて探してるのか見つからなくて泣きそうになってる夢だった。
 仕事とSくんとどちらかしか選べないならどっちとる、って言われたら、おれは迷わずSくん選ぶけど……なんかこないだの配信でSくんも大事なもの探してるけど見つからない夢とか、(大体神話とかおとぎ話では怪力や魔法の力・生命力の源の)髪が抜け落ちる夢を見たっていうし、リンクしてて不思議(ちなみに、旧約聖書に出てくるサムソンは、自分の怪力の源になっている髪の毛の秘密をデボラに教えてしまって髪を切られて力を失い殺されたし、古事記に出てくるスサノオノミコトは、姉のアマテラスが知ろしめす天津国を荒らす悪さをして罰として爪と髪の毛を切られておとなしくさせられている。あと、最近ディズニー映画になったアンデルセン童話のラプンツェルも、髪の毛が魔法の力の源だよね)。おれは、いくら好きなことでも仕事だけの人生より、Sくんとの将来がいいね。

 あと、おれも最近はもらってるコンペの課題、どう調理して自分で楽しむか工夫することに神経を使ってる。じゃないと作ってても気分が乗らなくて曲が満足のいく出来にならないというのもあるし、長く仕事として続けていけない気がするから。おれも飽きっぽいから、マンネリにならないようめっちゃ勉強してるよ。例えばウェーバーとかユングとか読んでても、本の内容を自分の持ってる課題と関係づけながら抽出して再構成していく、というのかな。そういう作業は地味だけど、通俗的なものの見方より自分がよりしっくりくる深い場所に降りていくには必要なことだし、関心事項だから勉強する過程として楽しいしね。
 注意を払う動機というか、そのエネルギーが尽きてしまうと立ち往生してしまって曲作れないお仕事できないから、多分勉強することはやめない方がいいんだろうと思ってる。向いていない業種であるわけではないし、そもそも、自分が心から好きだと感じてやっていることだからね。工夫で続けられるなら。課題のコースから外れないままで、与えられたそのものより深くに降りていく道を見つけていくというのは結構楽しい作業だと思うよ。一度コツがつかめてしまうと、オリジナル素材から外れなくても生命を吹き込む創造的なことができる。すべてにおいてそうできたら、それが一番楽しいことだと思う。
 でもね、ふたつほど懸念があって……それは、ひとつは線引きの問題。
 特にどのコンペがじゃなくて一般論としてだけど、誰かのために書き下ろす歌っていうのはさ、その相手の心を深く分析して共感して、一時的にでもその人で頭をいっぱいにして、その人に疑似的に恋をしないと本当に良いものはできないわけだよ。……おれは、それを完全に仕事として割り切れないんだよね。割り切れないってのは、曲だけをじゃなくて特に歌詞を一緒に書くときにそうなるんだけど、心情を引きずるんだよ。自分の過去のすべてに照らし合わせて、世界観的な対決をするから、相手に深く引きずり込まれもする。正直、Sくんがいるのにそれをしたくないというのもそうだし、誤解もされたくない。
 Sくんみたいにきちんとけじめをつけるというか、仕事と自分の間にきちんとした一線が引けない……おれが未熟なだけなんだろうけど。というのがひとつだし、あとは……おれは中途半端な仕事をするくらいならSくんのお仕事ややりたいことをサポートするのに回る方がいい気がするってのがもうひとつかな。向き不向きとか、他にもいろんな面から考えて、この先も長期的に安定して成功する見込みがあるのは明らかにSくんのほうだし。

 まあ、たしかに、それでもおれはひとりでも今のまま努力を続ければ確実に遠からず今の日本の音楽業界で成功すると思うけど、でもさ、おれはSくんと一緒に生きてくのがいいわけだよ。そう考えた時に正直迷ってる、今の時点で自分は何をしてたらいいかな、何をして準備してるのがベストかな、って。君との未来を考えてるときっていうかさ、君はこの先何をしたいかな、とか、そのためにおれが具体的に何を準備するとか考えてるときが一番ワクワクするんだよな、ここ半年くらいというか、今は。あらかじめ可能性を狭めても、楽しさ半減してやってく意味が薄れる気がするし、あんまり先のことは今から先取りして決めつけてしまわない方がいいとは思ってるけど、どのみちその時々の君の必要を超えたり君の必要から外れた「作戦」を提供することはおれのすべきことじゃないからな。
 要するに、完全に君のサポートに回ると締め切りに追いかけまわされてる今に比べてかなりの時間が空くけど、空いた時間、おれは何に使うのが良いかねってことで迷いが生じてる(ある意味では贅沢で幸せな悩みだ)。
 ただ音楽はやめたくないんだよなあ、作曲は自分の精神の安全弁になってるし。読書とか数学とか勉強もやめてしまうと、長い目で見たときに知的基礎体力が落ちて君の助けになれることが減っていってしまうから、もし一緒に住むならおれの家にある本を持ち込みたいかなあ。普通サイズの本棚三つ分くらい? 家買うとかして一緒に住むとして、住むのは東京でも東京じゃなくてもどっちでもいいし君の都合にあわせるけど、本とCDとギターとPCさえ持っていければ、おれはあと特に何も必要ないかな。もしかしたらあとキーボードと電子ドラムが増えるかもしれないけど。
 ちなみに本は語学と物理・化学・数学の問題集以外だと、楽譜と医学書とコンピュータサイエンスの本と、ユング心理学の本とウェーバーの理解社会学の本とローレンツの動物行動学の本と、山内昌之先生の歴史学の本と、日本の古典とかドストエフスキーとか1990~2000年代のラノベとか小説が少し、かな。エロ本は持ってないよ。一応もう少し選別もするけど、本は……この先は(今も使ってるのは三冊くらいあるけど)料理の本と、(和洋・アニメ漫画・古典絵画問わず)画集とか、動物や風景の写真集を買い集めていきたいなあ。Sくんのデザインの仕事とか今後の生活の助けになるものがメインでほしい感じだなあ。


 ――社会の状況がどうあれ、混迷を極めていることも理解はしているが、今はおれのそれほど明るくはなかった人生の中で最も幸せな日々だ。おそらくこの先も最高記録を更新して、もっと幸せなものになるだろう。先日、銀色の金属でできている二つの複雑ならせん状歯車機構が、ぎゅるぎゅるガチガチと音を立ててすべてかみ合っていき動き出す夢を見た。夢はそれだけだったけど、なんだか二つの運命が合体して動き出す始まりのようで印象深かった。

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