見出し画像

規格要求事項の私的解釈:「8.3.2 設計・開発の計画」(デジタル化社会の戦略思考「コーペティション」

ISO9001:2015という規格の理解をもっと皆にして欲しいということで「四方山話」的な投稿の試行錯誤中。

「コーペティション」を軸に投稿。
-------------------------------
規格要求事項の私的解釈:「8.3.2 設計・開発の計画」(デジタル化社会の戦略思考「コーペティション」)

■規格要求事項の限界

ISO9001:2015という規格は、元々は1994年頃の製造業に対する規格が出発点となっている。その後、製造業だけでなくサービス業にまで範囲を広げたことや、結果ではなくプロセスで品質保証を考えると言うことで「マネジメントシステム」というコンセプトを導入した。

マネジメントシステムとは、組織と機能と標準と言われている。しかし、この考え方は伝統的な統制型企業のイメージから脱却できていない。近年のスタートアップ企業のように柔軟性と迅速性を持った企業では、型にはまった組織運営ではなく自由を中心とした企業運営がされる。

それだけではない。
例えば「コーペティション」と言う考え方がある。

「cooperation(協調)とcompetition(競争)。この2つからの造語を、新しい戦略思考を表す言葉としてタイトルにした名著Co-opetition(邦訳『コーペティション経営』、残念ながら邦訳書は絶版)。同書が1996年に発行されて以来、この戦略思考は経営で、より多く実践されるようになりました。」

という説明とともに

「自社と他社の相互依存関係において、価値を創造する段階では協調し、価値を分配する際には競争する。その中で、自社が獲得できる価値を増やす戦略を考えます。論拠となるのは、ゲーム理論です。」

と言う記述がその性格を説明している。

おそらくはこれ以外にも多くの経営戦略がある。
ISO9001:2015という規格では冒頭に

品質マネジメントシステムの採用は,パフォーマンス全体を改善し,持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る,組織の戦略上の決定である。

にもかかわらず、「戦略」に無関心であることは残念である。

■設計開発も単独で行なう時代ではない

設計開発に関する規格要求事項を見ておこう。

8.3.2 設計・開発の計画
設計・開発の段階及び管理を決定するに当たって,組織は,次の事項を考慮しなければならない。
a) 設計・開発活動の性質,期間及び複雑さ
b) 要求されるプロセス段階。これには適用される設計・開発のレビューを含む。
c) 要求される,設計・開発の検証及び妥当性確認活動
d) 設計・開発プロセスに関する責任及び権限
e) 製品及びサービスの設計・開発のための内部資源及び外部資源の必要性
f) 設計・開発プロセスに関与する人々の間のインタフェースの管理の必要性
g) 設計・開発プロセスへの顧客及びユーザの参画の必要性
h) 以降の製品及びサービスの提供に関する要求事項
i) 顧客及びその他の密接に関連する利害関係者によって期待される,設計・開発プロセスの管理レベル
j) 設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書化した情報

それほどの違和感はない。
しかし、この設計開発は「クローズ」した環境での設計開発であり、オープンイノベーションや共同開発については何も述べていない。

従って、下記の様な開発プロセスについては具体的なマネジメントのポイントの対応はISO9001:2015という規格だけでは十分ではない。

○従業員と客のイライラを解消 セブン、新型電子レンジの設置店舗を拡大
2024年04月27日

 セブン‐イレブン・ジャパン(東京都千代田区)とシャープ(大阪府堺市)は、商品ラベルのQRコードを読み取り、適切に加熱ができる電子レンジを東海エリア(愛知県の一部、三重県、岐阜県) のセブン‐イレブン1080店に拡大して設置したことを発表した(2024年3月末時点)。さまざまな国籍の従業員が増える中、簡単かつスピーディーに商品ごとの正確な加熱時間を設定できることでおいしさと利便性の両立を目指す。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2404/27/news041.html

開発主体(体制)が共同が前提になり、上下関係での管理にならないこともある。

a) 設計・開発活動の性質,期間及び複雑さ

を考慮したとしても計画の複雑さは減るわけではない。

■オープンイノベーション

オープンイノベーションは数年前に提唱された概念である。
イノベーションを単独で起こすことは難しい。従って、自らの手札をテーブルにさらし新たな解決策を皆で考える、と言うコンセプトなのだが参加者の思惑が交錯して中々実現することが難しい。

その一つが「知的財産権」であり利益の配分である。これは「コーペティション」でも同様である。

従って、8.3.2 設計・開発の計画には次の一分も必要となる。

k)開発を共同で行なう場合の知財・利益の配分への合意

書いていないからと言ってこうしたことを無視してはならない。

(2024/04/30)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?