見出し画像

なにげなニュース:デジタル化を進めても貧困問題は解決されない(2024年問題への対応がその場しのぎの訳)

■2024年問題が放置されてきた結果

残業規制の問題は突然出てきた問題ではない。すでに2019年に法律が整備され、その猶予期間が切れるだけである。人手不足問題も突然出てきたわけではなく、特に建設業では安い労働力としての外国人に頼ってきただけである。

コロナが5類になるに伴い外国人の訪日も緩くなったと言うが、その外国人労働者も日本の奴隷制度的な扱いや賃金の安さからそっぽを向き始めていると考えられる。

従って、その根底にあるのは賃金や報酬の問題である。

■お金に目を向け始めた業界

低い収入は、事業に必要な人材を確保できないというのはどこの業界でも同じなのであろう。

○警備員、コロナで大量離職 有資格者は増加、復職進まず―低収入理由、契約形態に課題
2023年07月30日

国土交通省によると、全国の空港で警備業務に従事する保安検査員(無資格者を含む)は、2020年4月で約7400人いたが、コロナ禍で23年4月には約5700人に減った。一方、配置が義務付けられている「空港保安警備業務検定1級」の資格者はコロナ前より増加。警察庁によると、1級資格者は18年が3457人で、21年に3949人まで増え、22年も3783人いた。
 復職が進まない理由として指摘されるのが、給与水準の低さだ。国交省のまとめでは、平均年収は約374万円で、空港業務の他の職種より低い。業界関係者は「日本特有のいびつな契約構造が背景にある」と話す。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023072900331&g=soc

背に腹は代えられないと言うことで、建設業界業界も「お金」で解決しようとしている。

○30代年収900万円に引き上げの企業も 「建設業界」深刻な人手不足…“2024年問題”でどうなる? 専門家が解説
2023-07-30

ユージ:僕も建設業界にいたので、大変なのはわかります。「建設業界の2024年問題」について、何か対策は進められているのでしょうか?

塚越:まずは賃金を引き上げて、若手の人材を確保することです。例えば、積水ハウスグループの「積水ハウス建設」では、今年4月は高卒など39人の大工が入社したのですが、これを再来年の2025年4月には133人と3倍以上にすることを目指しています。

そのため、今年4月入社の社員の年収(初任給)を、前年比で最大11パーセント増の約17万9,000円としました。さらに工事責任者(職長クラス)は、これまで30代で500~600万円程度だった年収を、来年4月から最大1.8倍の約900万円にするとのことで大幅に給料を引き上げます。

https://news.audee.jp/news/hBcuWRVwFx.html?showContents=detail

直接的な施策としても下記は注目しても良い。

○社員に代わって奨学金返済 制度創設企業が増加 背景に人材獲得競争
2023/7/19

奨学金の貸与を受けた本人に代わって、社員の奨学金を返済する支援制度を設ける企業が増加している。日本学生支援機構の奨学金を返済する「奨学金返還支援(代理返還)制度」では、6月末現在で利用企業は920社に上っており、今夏にも1千社を突破する見通しだ。制度を新設した企業の中には代理返済によって新卒社員の採用を有利にしたいというところもあり、人材獲得競争の激化も背景にある。

https://www.sankei.com/article/20230719-WG4T3WNLTJK6LAWGZSI22H6D6Y/

そうした目で見ると。働くヒトの労働負荷を減らすという発想は間違っていないが、前提条件として「報酬が見合わない」という視点では下記の政策は、ピント外れである。

○【国土交通省】 物流「2024年問題」でトラック運転手不足へ対応策
2023-07-12

パッケージでは、大手の荷主企業や物流事業者に対し、運転手が集荷先や配達先で待機する時間を短くしたり、納品回数を減らしたりする改善計画の作成と報告を要請。不十分な場合、国が事業者に勧告や措置命令などを行う。

 運転手が適正な運賃を受け取れるよう「送料無料」表示の見直しに取り組む方針も明記。国が荷主企業などに示している運賃水準の目安も、運転手の実質的な労働時間やガソリン代の高騰などを考慮して見直す。

 現在12%程度の再配達率については、消費者の意識を改革して24年度までに6%に半減させる目標を設定。具体的には宅配ボックスの普及や、1回で荷物を受け取ったら買い物に使えるポイントを付与するといった取り組みを想定している。

https://www.zaikai.jp/articles/detail/2993

■人手不足問題の解決の為には戦略のミックスが必要である。

単純に報酬を上げたからと行って人の採用が順調に進むわけではない。もちろん将来を見越した報酬体系への戦略は必須ではあるが、短期的な成果は出ないであろう。

だとすれば、人手不足対応の戦略は、短期・長期の視点、報酬と働きやすさ(労働環境の改善)、そして生産性向上などのミックスが求められる。

こうした背景であればDX戦略も意味が出てくる。

○大成建設、「作業所ダッシュボード」を全国約700作業所で利用開始 富士通と共同開発
2023/07/31
https://enterprisezine.jp/news/detail/18165

○西松建設は精度の高い施工図をBIMから自動出力するシステムを現場で適用開始
2023/8/1
http://media-ir.com/news/?p=106674

また、事業構造の再編も意味が出てくるだろう。

○日本郵政とヤマトHDが「メール便」で連携、深刻化する人手不足
2023-07-13
https://www.zaikai.jp/articles/detail/2968

しかし、こうした単発の戦略では人手不足問題の根底にある「貧困」は問題は解決できない。何が問題なのかを意識することが重要である。

<閑話休題>

追記:
政府の発行している賃金統計を見ても建設業での賃金の低さは目につく。
また、建設業は正社員で動くわけではない。多くの不定期な労働者、一人親方で成り立っているという産業構造にある。
こうした弱者に目を向けない限り産業の活性化はあり得ない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?