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【夏休み大人の自由研究】風の道を訪ねて(2)

前編の【夏休み大人の自由研究】風の道を訪ねて(1) はこちらです

貧乏川系風の道を離脱し、隣の杣谷川系風の道へ向かうため東西の道に入った刹那、風が止んだ。じっとりと汗が出る。ずっと坂道を登ってきたんだから当たり前だ。

杣谷(2)から流れ出る風は3つに分かれて街路に入っていく。杣(そま)とは樹木を植え付けて材木を取る山をさす。かつては薪などの伐採が行われたのかもしれない。

1つ目の風の道に出る。貧乏川(1)よりも風が弱く山の香りはやや弱い。2つ目の風の道、美野丘小学校の西の道を北上する。運動場を支える巨大な擁壁が風を逃さず下へ押し流す。

右手に非常灯のあかりで妖しく浮かび上がる円形校舎が見える。神戸市内、いや全国的に見ても貴重な現役円形校舎だ。この校舎を見るとトアロードの老舗帽子店「マキシン」の円形パッケージを思い出す。そして「マキシン」といえば、かつて関西テレビで土曜日の午後に放映されていた「ノックは無用!」を思い出すのだ。

「神戸トアロード、帽子のマキシン」「マキシ〜ン」

という上岡龍太郎と横山ノックのコールアンドレスポンスは、僕の土曜日の心のベストテン第一位だった。

そして写真が暗すぎる。心霊写真にしか見えない。ここで以前特別に撮影した貴重な円形校舎内部の様子を見ていただこう。

まあ!なんということでしょう!殺風景な校舎の天井が匠の手によってプラネタリウムに変わったのです!

本題に戻ろう。風の道でしたよね。

杣谷系の3本目の風の道を南へ下る。風が止んだ。さっきまでは風に向かって歩いていたが、今度は風と一緒に歩く。つまり風の速度と歩く速度と方向が同じなので風を感じない。試しに止ってみると背中に風を感じる。そして目の前の夜景。ちょー気持ちいい。

六甲川系風の道

風に押されながら坂を下りきる手前で東へ折れ、六甲川の橋の上に出る。山からの風とともに花の匂いがする。川岸の花が咲いていた。

あいかわらず写真が暗い。ちゃんとしたカメラ持って来たらよかった。

灘区屈指の急勾配、長峰坂。途中にクランクがあるせいかそんなに風を感じない。

日柳川。ひんやりした風が山手の細い街路に沿って吹いている。この辺りまで来るといまだに尺貫法が使われている。

日柳川を過ぎたあたりで風が止む。なぜだ。

理由はこれ。

どどーん

安藤忠雄氏設計の海星病院が風をせき止めていた。ちょうど風の道に建って、しっかりと谷を下る涼風を受け止めていた。もはや風のダムだ。本人は「六甲おろし止めたった!どや!」とかドヤ顔で言いそうだが夏はたまったもんじゃないな。時代が時代であれば灘の酒造りにかかせない六甲おろしを止めるんだから、西郷の酒造所からクレームついたかもしれない。いや人の心配するよりも、夜に篠原北町の高級住宅街をiPhone持ってウロウロしている僕の方がクレーム出るなと思った。逃げるように風とともに坂を下る。

看板の下が日柳川。いかつい看板とは裏腹にシル谷系の風が合流し、いい風が吹いている。引き続き逃げるように風とともに坂を下る。そして、杣谷川系の山風と六甲川系の山風が合流し、千の風になって吹き下す都賀川へ。

ここは風のスクランブル交差点、いや風の谷と呼んでもいいだろう。市街地の川にいるのに山の匂いがする。河原には僕と同じように風を感じにきた「風の谷のナダシカ」達がいた。山からの風を浴びながら気持ちよさげにたたずむナダシカに声をかけるべきか逡巡した。「涼しいよね。この涼しい風は風の道っていうのがあって。。。」

やめよう。野暮すぎる。ナダシカに理屈はいらない。

もしあなたが灘区民で、涼みたいなと思ったら、ぜひ風の道にきてみてください。想像より圧倒的に涼しい風が吹いてます。

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