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エッセイ&コラム(しっかり)

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その日、もしくは前日に感じたことを「しっかり」と、 ときには前後編や①と②などに分けて、まとめた文章です。 推敲した最終稿をここに載せます。 <これまで【note】に綴った日記… もっと読む
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2017年11月の記事一覧

サッカーといえばスペイン

サッカーといえばスペイン

2011年に、サッカー王国としてのスペインを初めて取材した。
たしか2月頃。春まだ浅い時期だった。

当時ドラマを書いていたわたしは、docomoとWOWOWの共同プロジェクト(スペインサッカーを紹介するミニドラマを携帯のスマートフォンで提供するというもの)で脚本を担当し、シナハン&ロケハンの旅へ。スタッフと一緒にマドリード、バルセロナ、そしてセビージャを回った。

1話5分ほどで、全12話。当時

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もやもやとカラオケ

もやもやとカラオケ

いつも絶好調というわけにはいかない。

気にすることでもない些細な、第三者が聞いたら「そんなの大丈夫だよ!」と太鼓判を押すようなことでも、本人にとっては気になってしかたがないときもある。

そして、そうした「もやもや」が生じるのは、往々にして「単純に疲れている」ときだとわたしは思っている。人は生命体なので、体力が消耗すると思考力も低下し、普段なら気にしないことも気になっていくものだ。

昨日は土曜

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10番を背負う男

10番を背負う男

今日、ブラジル対日本の親善試合で、乾貴士選手が背番号10をつけた。
代表のエースナンバーである。
ハリル監督の采配で後半からの出場だったが、やはり彼は魅せてくれた。

後半42分。カゼミーロからファウルをもらった乾にフリーキックが与えられ、杉本がヘディングを決めた(けれどオフサイドだった)場面。
結局ノーゴールになってしまったが、なんとも美しいフリーキックだった。
彼こそが今のチームで10番を背負

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川上弘美さん

川上弘美さん

もっとも好きな日本の作家は誰?と訊かれたら、
わたしは迷わず、「川上弘美さん」と答える。

彼女の文体の美しいやわらかさと、言葉の選び方がとても好きだ。
たとえば愚痴るを「ぐちる」とひらがなで書いたり、酒の匂いを漂わせて深夜に帰宅するという表現を「微醺をおびて夜更けに帰る」と書くところに、なんだかもう、きゅん、としてしまう。うまくいえないけれど。
わたしもこんなふうに書けたらいいのに、と、いつも羨

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あのうなぎをもう一度

あのうなぎをもう一度

夜、自宅への帰り道。
ふと足を伸ばして、近くの鰻屋の前まで行ってみたら、青いビニールシートがかかっていた。取り壊しが始まったらしい。店を閉めてもう2年ほど経っただろうか。

初老の夫婦が、細々と営んでいる店だった。
うなぎに目がない夫とふたり、結婚して今の街へ引っ越してから10年以上、少なくとも月に一度は通っていた。

うな重は、特上、松、竹、梅の4種類。
オヤジさんが国産のうなぎにこだわっていた

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パンと受難

パンと受難

わたしはお酒が飲めない。

飲めなくともお酒の席は好きで、居酒屋さんも大好きなので、わたし自身はまったく気にしないのだけれど、「飲めないのかあ」と残念がられてしまうことも多い。とくにお酒をよく飲み、気を遣う女性に言われる。そして多くの場合、そうした女性からは、夜の食事に誘われることがなくなってしまう。
お酒が飲めないなら誘えない、と、直接言われるときもあるが、こちらから声をかけてもやんわりと断られ

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『ブルー』と6つの100円玉

『ブルー』と6つの100円玉

11月1日。水曜日の夜は、日比谷の東京国際フォーラムへ。
渡辺真知子の40周年記念コンサートに出かけた。

『迷い道』でデビューしたのは、ちょうど40年前の1977年11月1日のことだという。そうか、あれからもう40年なのかと深く感慨に耽りながら、真知子ちゃんの歌声に耳を傾けた。

真知子ちゃん。わたしは子供の頃から彼女のことをそう呼んでいる。

初めて買ったレコードは、『かもめが翔んだ日』(78

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ラーメンとSちゃん

ラーメンとSちゃん

今朝、大きな段ボール箱が届いた。
名古屋のSちゃんからだ。
さっそく開けると、かわいいまな板やふきんなどのキッチングッズと、“いつもの”ラーメンが入っていた。

Sちゃんは中学の同級生で、同じクラスになったのは3年のときである。友達になったきっかけはすっかり忘れてしまった。ふつうの公立中学だったので、生徒は地域の3つの小学校から来ていたのだが、出身小学校は違っていた。五十音順の名前が近いとか、部活

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