韓国ミュージカル観賞記①~時が来た

初めに断っておくが、わたしはミュージカルが苦手だ。
子供の頃は、熱狂的なヅカファンだった叔母たちに連れられ、宝塚も東宝も何度か観に行ったけれど、あまり魅力を感じなかった。歌で想いや感情を表現する演者たちを、うっとり眺める眼差しがわたしにはないと気づいたのは、二十代の初めだろうか。きらびやかな舞台装置には目を瞠るけれども、物語に没入できず、引いてしまう。ファンにはおそらくたまらないであろうミュージカル独特の世界に気後れしてしまうのだ。
大仰な演出が苦手なのかもしれないし、セリフを歌うことに違和感があるのかもしれない。
以来、歌は歌、芝居は芝居、別々で観るものだと思っている。

それでも、友人の役者が出演するミュージカルにはできるだけ足を運ぶし、食わず嫌いはいけないと「レミゼ」も「シカゴ」も観ている。
が、ここぞという場面で、心情を朗々と歌い上げる演者を前にすると、やはりどこか冷めてしまう自分がいた。

そんなわたしが、先日の連休、ミュージカルを観るために、遥々ソウルまで旅をした。

きっかけは、1月18日。
友人の紹介で知り合った韓流エンタメのスペシャリスト、田代親世さんに誘われて出席した『韓ミューサロン』。

以前から、韓国のミュージカルに興味はあった。
3年前、JYJのジュンスを取材し、ドキュメント番組を作ったことがある。
K-POPもアイドルもまったく知らなかったわたしは、このときJYJがどんなグループなのかも知らなかったほど疎かったのだが、取材相手を調べていくうちに、ジュンスが韓国のミュージカルスターとして活躍していることを知り、独特なハスキーヴォイスの歌声に聴き惚れてしまった。実際、インタビューした彼自身もとても謙虚で、好感を持った。いつか彼の舞台を観てみたい、ぼんやりとだが、そう思っていた。

田代さんによると、韓国ではドラマで主役を張る超人気俳優が、ミュージカルでも主演し、見事な歌声を披露するという。演技も歌もトップクラスの俳優が何人もいて、韓国ミュージカルを盛り上げている、ということらしい。
連続ドラマの撮影スケジュールと重なっていても、ミュージカルで主演のオファーが来たら断る俳優はいない、というから驚きだ。
掛け持ちなど、日本では到底ありえない。
韓国では、主演でも一人ですべての公演を演じ切るわけではなく、ダブルはもちろん、トリプルキャストも当たり前だというが、それでも尋常ではない過密スケジュールをこなすことになる。事務所的にも日本ならNGになるところだが、そこをOKにするのが韓国の底力なのか。
要はそれほど、俳優にとってもミュージカルは「魅力のある仕事」だということだ。
俄然、興味が湧いた。

しかもちょうど、2月に田代さんが引率するミュージカルツアーがあり、観劇する公演は、ジュンスが出演する『エリザベート』と、チョ・スンウの『ジキル&ハイド』だというではないか。

チョ・スンウは、名実ともに韓国を代表するトップ俳優である。
彼のドラマ『秘密の森』については以前、このnoteに書いた。

観に行きたい、行こう、次の瞬間には「行きます!」と、ツアーへの参加を申し込んでいた。

帰宅し、チョ・スンウが歌う姿を、YouTubeで探す。
『ジキル&ハイド』の名曲だという、「時が来た(This is the moment)」。
こんなに歌の上手い人だったのかと、素直に驚く。

しかし、歌は歌。芝居は芝居だ。ミュージカルはどうなのか?

2週間後。
ソウルのシャルロッテ劇場で、わたしは衝撃を受けることになる。

※その②へつづく。

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木庭 撫子 Koba Nadeshiko

日常の仕事は「浅野有生子」の名前で、おもにスポーツドキュメンタリーの放送作家をしています。 木庭撫子は詩を書く、もうひとりのわたしです。 http://kobanadeshiko.com

エッセイ&コラム(しっかり)

その日、もしくは前日に感じたことを「しっかり」と、 ときには前後編や①と②などに分けて、まとめた文章です。 推敲した最終稿をここに載せます。 <これまで【note】に綴った日記をカテゴリー分けしました。 その分野だけ読もうかな、というときに>
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