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個展「Lost and Found」について②

制作が大詰めとなっており、前回からちょっと日がたってしまいました。宣言通り、個展についてあれこれ書いていこうと思います。今回はモチーフ選択についてです。

前回の記事はこちら

個展「Lost and Found」開催にあたり、全体として描くモチーフは「街と人」に決めました。
普段、というか、今までは自然の風景を中心に描いていました。しかしいつごろからか、風景ばかり描いていることに違和感が出てきたのです。
きれいな風景をきれいに描いてるだけでよいのだろうか、流行りの絵に便乗してるだけではないだろうか…もっとほかにわたしがきちんと描くべきものはないのだろうかという迷いがありました。
大学で風景画の研究をしていたこともあり(クロード・ロランという17世紀の画家について研究してました)、風景画が単純にきれいな風景をうつしだすだけのものではないことはわかっていたつもりで、自分でも(クロードのようにとはいきませんが)風景を描くことによってそれ以上の何かを描き出す可能性はないかと探り制作を続けていました。(そして昨年の個展ではその成果を現すことができたらという企画意図もありました)。
でも実は、たいそうなことを考えていた割には、薄っぺらに「それがきれいだから描く」ことしか考えていなかったのではないかという疑問がありました。いや「それがきれいだから描く」というモチベーションも違ったかもしれません。(「それがきれいだから描く」という気持ちだって突き詰めると根源的で、ものすごい力のあらわれですから)。それよりも、どこか、「それがウケそうだから描く」になっていたかもしれません。
わたしはなにを思って生活していて、なにをどう描いたら自分の思うところと合致するのか、ということに意識を向けざるえませんでした。

制作途中の作品

それからというものの、本を読んだり、画集や写真集をみたり、ときには散歩したりと描きたいものについて、思っているところについて見つめなおすことをしました。
そして出した結論が、「なくしたもの、忘れたものについて描いてなにかみたい」でした。そして具体的なモチーフとしては、いったん自然の風景からは遠ざかってみよう、考えていることを表すための題材として「街と人」を中心に据えて描いてみようと思ったのです。
都心近くに住んでいるので、街というものに普段からなじみがあること、ソール・ライターの写真にが気になっていたこと、19世紀末~20世紀のパリの写真を収めた”Paris mystique”という写真集がめちゃめちゃ面白かったこと…そんなあたりから題材は決まっていったように思います。
ただどこか特定の街について語りたい、というわけではないのであくまで架空の場所で、しかし街があって人が訪れればなにかが起こることを期待してこんなテーマになりました。そして、たくさんの人が、ものが流れゆくために忘れていくこともたくさんあるのではないかと思えば、「Lost and Found」のテーマとも合致しそうだと。(「Lost and Found」という「街と人」を通して描こうとしているものについては次回以降触れていくとします)。

描くモチーフが何であれ、思想を織り込むことのできる方はたくさんいるでしょう。そしてイラストレーターを名乗っているからには、依頼されたモチーフがなんであれ描くことが求められます。
しかし今回の展示は誰かの依頼というわけでなく、わたし自身で描くものも描き方も決められます。それならばこの機会に、これだ、と思ったものを思い切り描いてみて、ある種の再出発の機会にしようと次第です。

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苗個展「Lost and Found」
場所: MOUNT Tokyo 
東京都世田谷区駒沢2-40-6
駒沢大学駅から徒歩10分
期間: 2022年4月20日(水)~5月1日(日)※月・火は休廊
11:00~18:00(最終日は17:00まで)
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