神様からのプレゼント。

進行したアルツハイマー型認知症でアパシーが強く、色々と話しかけても伏し目がちに「ええ」「うん」程度しかいつも診察室で会話が出来ない女性がいる。

介護は大変だと思うが家族はとても献身的な方で、いつもユーモアを交えてこの1ヶ月の様子を丁寧に教えてくれるのだった。

先日、下血を契機に消化器の癌が見つかり入院してopeをすることに。環境の変化や身体的な侵襲もあり、混乱するリスクは高いと思われ、ちゃんと入院治療が出来るのか心配をしていた。


opeは無事終わったようで、予定通りの受診日に家族付き添いで来られた。彼女は相変わらず「ええ」「はぁ」というのみでopeをした事もあまりはっきりとは覚えていないようだった。

ただいつもより家族の表情が明るい。

「先生、無事に手術は終わりました。混乱するかと心配をしていたんですが、むしろ元気で術後の2日間だけ昔の母親に戻って目に力もありハキハキ話せたんです!認知症が治ったみたいでした。でもその後はまた戻っちゃいましたけどね、、」

変な表現だが恐らく良い方向にせん妄が起きたんだろう。

もちろん家族には「それはせん妄ですよ」などと野暮なことは言わず、「いつも介護を頑張られているから、神様からの少しの時間のプレゼントだったのかも知れませんね」と伝えた。涙ぐむ家族を見て少し泣けた。

かなり進行した状態に見える認知症でも、脳内になんらかの変化が起きれば、以前の状態のように見えるまで賦活されるのか。記憶は難しくても少なくともアパシーはなんとかなるのかも知れないという希望を感じるepisodeだった。

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KEI

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