おっちょこちょい研修医

総合病院勤務時代の話。

当時 僕は指導医で下に研修医が何人かついていた。

(業界用語では指導医=オーベン、研修医=ネーベンと言います) 

その中に一人 少し困ったさんがいた。彼はとても明るくムードメーカー的存在なのだけど とにかく落ち着きがなくおっちょこちょいで 何かトラブルを起こすんじゃないかと思っていつも冷や冷やしながら見ていた。 

ある日 そんな彼と僕は当直で組むことになった。無事に朝を迎えられるよう祈る僕の気持ちも知らずに彼は「よろしくお願いしまーす!」と場違いな声のトーンと大きさで挨拶をしてきた。

やれやれ。

当直開始前の心配も外れ特に修羅場もなく数時間が経過した。時計の針が0時を回ろうとする頃、意識消失発作疑いの若年男性が救急搬送されてきた。僕は他の患者さんの処置をしていたので彼に初期対応をお願いした。 

研修医「はいっ、分かりました!」

お願いの途中で彼は救急車の方へ走って行った。本当にそそっかしい。

戻って来た彼から患者さんの状態、意識消失発作の状況、目撃者情報などを聞く。

僕「(本人とか目撃者に)今コンタクト取れる感じ?」

研修医「はいっ、分かりました!多分取れると思います!」

コンタクトコンタクト…と言いながら彼はまたストレッチャー(業界用語:移動する寝台車の事)の方へ走って行った。

ふと嫌な予感がしたので僕もすぐ後を追った。

彼は患者さんの顔を覗きこみ真剣な表情で 目を開けてコンタクトを外そうとしていた。

僕はボルト並の加速で それを制止した。

そんな彼も風の噂ではオーベンとして研修医の育成を熱心にしているらしい。ちょっとしたホラー。

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KEI

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