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映画『あなたの名前を呼べたなら』を観て

『あなたの名前を呼べたなら』
よく出来た映画だと思います。
私個人の感想を一言で云えば「無国籍ファンタジー」(肯定的とそうでない意味の両方を含む)でしょうか。
宣伝にあった〝インドでは未公開〟〝差別を描いている〟に勝手な期待を抱いて「すわカースト制に真っ向から挑んだ問題作?!」と思い込んだのは私の早合点ですが、冒頭マハーラーシュトラの雄大な景色が映された時「これは良いぞっ」と胸を膨らませた時が個人的に全編のピークでした。ヒロイン:ラトナの存在が都市生活者にとっての〝異人〟に設定(?)されている印象を受けましたが、恐らくそういう演出意図だったと思います。また、たびたび背景となるムンバイの摩天楼や都会の雑踏に比べて、ラトナの村が山なみとヒンドゥーの祠ぐらいしか描かれないことにも違和感を持ちました。
ドキュメンタリーではないので仕方ないですが、村で「死人」扱いされた未亡人ラトナもヒンドゥー・コミュニティの中ではさらに〝人間扱いされない階層〟よりも上で生活していた事実があったわけです。それは彼女の役柄がヴェジタリアンに設定されていたことからも伺えます。
最下層民衆には禁忌に従って食物を選ぶ余裕などありません(故に〝穢〟とされるのです)。またエンディング・ロールを見て思ったのは、そこに居並ぶインド映画人の姓がほとんど上位カーストつまり〝浄〟とされる身分の人々で占められていて、私にはそれが後半の社交パーティーの場面と重なって思えました(あくまでも私感です)。
さて、インドでは未公開の理由…。それは興行的にみて、この作品は富裕層からも庶民層からも共感を得にくいからだと私は推測しました。

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