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天に舞う…

 本日2月29日は、漫画家︰芦原妃名子先生の初月忌に当たります。
御親族の胸中如何ばかりかとお察し申し上げます。
 生前、舞踊家の友人を介してお目にかかった者として、今日は故人を偲びたいと思います。

 初対面の挨拶直後に私が発したのは、こんな言葉でした。
「少年漫画で育ったもので、少女漫画というか女性向けの漫画は、ほとんど読んだことないんですよ。〝目の中に星がキラキラ〟とか、そんな程度しか知らなくてね」
かかる無礼を受け流し、静かに微笑まれて、
「まぁ、そういう王道イメージというか、ステレオタイプも変えていけたらなあ、って」
── その真摯な佇まいに、思わず我が身を省みました。

 先生は『セクシー田中さん』の御執筆に際し、みずからのフィジカルを以て、各キャラクターたちの行動・言動を内実化しておられました。実際にダラブッカ(アラブ音楽やトルコ音楽で使用される打楽器)を習い、ベリーダンス教室にも入られました。登場人物の倉橋がダンスの基礎トレーニングで「筋肉は人を裏切らない!」と悲鳴を上げるさま、笙野がダラブッカの練習に苦闘する様子などは、御自身の体験に裏打ちされた描写です。
 先生は作品に関し、ディテールについても〝知らなかった〟では済まそうとなさらない誠実な表現者でした。

ダラブッカとベリーダンス〈参考画像〉
第4巻の表紙と訃報翌日の拙投稿

 今でも鮮明に憶えていることがあります。
初めてお会いしたのは、友人が出演するショーの日でした。
大団円のダンスに参加された先生は、輝く笑顔で舞っておられました。
  合掌

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