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腹を割って話す飲み会という名の都市伝説

皆さんはこんな都市伝説をご存知だろうか?ニポンという東洋の国で働く人々は、仕事終わりの飲み会で切腹し、それを見物しながら話を弾ませる…

と言うのは大嘘で、本日は本音を打ち明けあうという意味の「腹を割って話す飲み会」という都市伝説について話をしよう。

 古くから「飲み会」は日本においては強力なコミュニケーション手段として捉えられ、その強さは「飲み二ケーション」との二つ名を持つほどだ。そこでは業務時間内では話せない腹の底を、お酒の力を借りながらリラックスした雰囲気で打ち明けあうことが主目的である。部下の様子がいつもと違うのを見兼ねて「どうだ、一杯。悩みがあるなら話を聞くぞ」と優しい上司が誘ってくれ、「実は…」と部下がとつとつと悩みを打ち明けたり、或いは「俺は、常務の言ってることには納得できないっすよ!!」などと、普段は冷静で寡黙な部下が胸に秘める仕事への情熱を突如として吐露する場にもなる。それをなだめる先輩、彼の意外な一面に驚きつつも成長を感じる上司、高い視座から彼を諭すベテラン社員、その話を聞いて感銘を受ける若手たち―――。飲み会では役職や年齢などの会社での肩書を緩やかに忘れ、皆がフラットな立ち位置から自由闊達に議論ができる場である。美味しいお酒を飲みながら語り合い、議論し、時には論争になるような感情のやりとりも赤裸々に交わし、夜が深まるとともに職場のチームの結束も深まっていく。飲みニケーション文化とは、日本のチームビルディングに欠かせない一つの重要な手段なのだ。

 さて、上記のような飲み会に参加したことがある人は、ぜひ私永池マツコまで至急連絡されたし。コメント欄に書き込んでいただいても構わない。
 ここで私が問いかけたいのは、「果たして、本音を話せる飲み会は存在するのか?」ということである。特に、部下側が本音を話せる機会はあるのかどうか。

 私の少ない経験の中では、そんな飲み会に出会ったことがない。自分が本音を話したこともなければ、本音を話している先輩を見たこともない。一度昔の上司に「腹を割って話す飲みニケーションをしたことがあるか」と訊いたことがあるが、「ない」との回答であったから、複数の人間が同じ状況にあるはずだ。
 年次の近い者たちで集まれば話は別だが、上司部下の関係性の中で開かれた職場の飲み会では、延々と偉い人が話をしているだけである。いかに偉い人が気持ちよくお酒を飲めるか。機嫌を損ねないか。偉い人に自分を売り込む機会にはなるかもしれないが、本音を語れる場とは程遠い。偉くない人(若手や一般社員など偉い人以外の人)でよほど自分語りが好きな性格でないと自分の本音を話せないだろうし、そんな人は普段から本音を話しまくっているだろう。

・若い人はお酒が飲めないから飲みに誘いづらい
・なんでもハラスメントと言われるので気軽に飲みに行けない
・コロナのせいで飲み会が減った
→飲みニケーションができず、部下の本音や気持ちがわからない

こういった声を聴くことが多いが、果たして本当にそうなのだろうか?
あなたは部下のことを知ろうとするときに、飲みニケーションしかカードを持っていないのか?
そもそも、本気で部下のことを知ろうとしているのか?
何のために部下を知ろうとしているのか?
自分の知りたいことだけを、知ろうとしているのではないか?

コミュニケーションとは本来双方向のやりとりをするものだ。上司が一方的に何かを語り掛けるのではなく、部下も自分の考えを話していいはずだ。勿論、そこにはお互いに対するリスペクトがないと成り立たない。「この人なら、自分の意見に賛成してくれなくても受け止めてはくれる」と双方が思いながら胸の内を話すことが、「腹を割って話す」ことではないのか。それは、アルコールがなくても、業務時間内でも、できるのではないか。信頼関係があれば。

飲みニケーションとは、いったい何なのだろうか。昭和時代の亡霊が令和の時代に生き残り、桃源郷のような蜃気楼を見せている。そういう都市伝説としか思えない。

一刻も早く成敗しなくては。


ながいけまつこ(飲み会苦手)

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