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1 「叱る」を手放す

岸見一郎さんの『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』を参考に、アドラー心理学を生かして教師としての在り方を見直そうとするためのnoteです。

自分の学級経営を振り返った時に、土台にあるのがアドラー心理学だと感じ、少しまとめてみようと思いました。アドラー心理学について書かれた本の中で一番わかりやすいと思うのは岸見一郎先生の書籍で、中でも「嫌われる勇気」と「幸せになる勇気」は何度も読み返す本です。この本を教科書にしながら数回に分けてまとめてみたいと思います。今回は自分がアドラー心理学に出会う前の自分について書きます。

叱ることがデフォルトになる

「以前は学校が荒れていたけれど、今はかなり落ち着いたよ。」という言葉を初任校で何度も耳にしました。私が初任として勤めた小学校は、右も左もわからない私がのびのびとやっていける落ち着いた素敵なところで、「荒れ」に関する先輩方のお話は現実味を帯びない昔話のように聞こえる程でした。初任校の教員の年齢構成は今の状況とはかけ離れたもので、50歳近くのベテラン教員が多く在籍し、ミドル世代や若手教員は少数となっていました。なのでミドル世代の教員も私のような新任教員も、ありがたいことにベテランからの手厚い指導を受けることができていました。時代の変化もあると思いますが、当時のベテラン教員に共通していたのは”厳しい”印象です。愛のある厳しさとでも表現するのでしょうか、子どもが大好きで普段は子どもとの距離が近くて優しいけれど、少しでも気になる場面を見つけたら徹底して叱るということをされていたように思います。この「少しでも」というのは僕なら受け流してしまいそうな些細なことで、これを見逃さない先生方の感度とブレない信念に驚くと共に、「荒れ」の状況から学校を立て直した先生方の凄みを日々ひしひしと感じていました。そんな学校に勤めていたこともあり、自分の中で「叱る」という行為は子どもたちのための指導であり、それができない教師は力量が低いのだとさえ認識していくようになりました。2・3年経つとベテラン教員と同様に私もよく「叱る」教員となっており、もちろん学級も表面上はそれでうまくいっていたので、周りからも「クラスいい感じだね。」と評価されることが増えていきました。もちろん子どもは大好きですし、休み時間などは思い切り遊ぶことは多かったです。ただ「怒ったら怖い」とか「いざとなったらめちゃくちゃ叱る」ということを武器にして、”できる教師”になったと自惚れていた自分がそこにはいました。

「叱る」を手放す

初任校で「叱る」という武器を手にしてしまった私は、異動した先の勤務校でも自信たっぷりで子どもたちの前に立っていました。そんな見せかけの自信を壊し、「叱る」ことを手放すように教えてくれたのは子どもたちでした。ある日、クラスの係活動をやっていない子がいることを知り、その子に「なぜやらないのか?」と聞いたところ「やりたくないから。」という返答がありました。そのようなことがこれまでにも何度か続いていたので、ここは厳しく対応しようと覚悟し、「それなら係をやめなさい!仕事もしなくていい!」と強い口調で叱りました。その瞬間、その子は教室を飛び出していき、グラウンドの隅の方で泣き崩れてしまいました。周りの友達も心配して追いかけていき慰めてくれていたのですが、教室に戻るまでにかなりの時間がかかることになりました。私もかなり焦り、その子の近くに行って謝ろうとしましたが、その時に周りで慰めてくれていた子どもたちから「先生、やりすぎだよ。」と言われ、その場から離れるようにも言われてしまいました。その後、教室に戻ってきた時にみんなの前で言いすぎてしまったことを謝罪し、二人でもゆっくりと話をすることができました。でも、その場面のことは私も子どもたちもずっと覚えていて、「またあんなことになるよ。」と、ことあるごとに冗談半分(真面目半分)に子どもたちから伝えられていました。そのことを当時の先輩に相談したところ、「どんな子どもたちにも小さな小さなプライドがあって、それを壊してしまうと殻にこもってしまうんだよ。」と教えていただき、その言葉は自分の頭に雷を落とすかのような衝撃を与えたことを記憶しています。その頃から「教師としての自分の在り方や価値観を変えていかなければいけない」と強く感じるようになっていったのです。

いいクラス、いい教師という幻想

それからたくさんの教育書(主に学級経営本)を読むようになりました。そこには一人一人に関わるとか、子どもたちの思いや願いを大切にするということが書かれていて、自分の教育観を見直すにはとても有意義なものとなりました。ただ、自分の根底にある「いいクラスをつくりたい」そして「いい教師」と思われたいという欲求を手放さない限り、どのような関わり方も子どもたちをコントロールする手段となってしまうのではないかと感じていました。そんなある日、教育書を買いにある書店で目に入った『嫌われる勇気』という本を目にし、なんとなく気になったので買って読み始めたところ、その頃の自分にとてもフィットし、自分を変えていくきっかけとなりました。本に登場する青年はまさに教師としての私に近く、その青年に教えを解く哲人が私のコーチになり、アンラーンさせてくれたのです。今の私の学級経営のベースにはこのアドラーの考えがあります。これについて少しずつ書いていこうと思います。岸見一郎さんの『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』を教科書にしながら、自分の承認欲求を手放し、他者をコントロールするのではなく、まずは自分を変えて、どのようにタスクに向かっていくのかを教師という視点でまとめられるようにします。当たり前ですが、誰にでも合うことありませんし、資格も何もない私が経験をもとに書いているだけですので、その点をご了承の上で読んでいただければ幸いです。

そして、自分のこの経験についての内容は、次の「ライフスタイル」という記事でひっくり返ることになります。

https://note.com/nagaken/n/n78a26488d3d6


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