数に強くなる本「はじめに」無料公開

5/24に『東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた 数に強くなる本 人生が変わる授業』(PHP研究所)が発売になります。

出版社のご協力を得て、ここに「はじめに」を無料公開いたします。ご興味のある方は、是非お読みください!

はじめに

 本書は「数に強くなる」ための本です。数字は、日常生活のあらゆる場面に顔を出します。ものの値段、時刻、体重、身長、レシピに記載されている具材の分量、仕事のノルマ、売上……身の回りの数字を挙げていくとそれこそ切りがありません。数字に弱いということは、日に何度も目にするこれらの数字の意味がつかみきれないということです。

 もちろん、数字そのものが読めない、という方はいないでしょう。でも数字が読めることと、数字の意味(数字が表すなにがしかの概念)がわかることとはまったく別の話です。それは、「I love you.」 を「アイ・ラブ・ユー」と読めるからと言って、「I love you.」が意味する本当のところがわかるとは限らないのと同じです。

 語弊を恐れずに言えば、ビジネスパーソンであっても、職種によっては英語がわからなくても大丈夫かもしれません。でも、数字の意味するところがわからなくてもよいケースというのは、少なくともビジネスの上では皆無ではないでしょうか? 

 ビジネスである以上、そこには必ずお金が関係します。そもそも金銭の多寡は数字で表されるわけですから、仕事をしていく上で数字の意味するところがわからなくても大丈夫だということは考えられません。顧客データにも在庫管理表にも人事データにも数字は溢れています。それなのに、数字が意味のない無機質な記号にしか見えないというのは、何割かはまったく知らない言語が混じる世界で仕事しているようなものだと言ったら言い過ぎでしょうか。

 私は東京大学の理学部地球惑星物理学科を卒業後、宇宙科学研究所(現・宇宙航空研究開発機構=JAXA)の月探査チームに所属しました。宿泊施設付きのレストラン(オーベルジュ)の経営に参画したり、指揮者を目指してウィーンに留学したりもしました。現在は永野数学塾という数学や物理を個別指導する塾の塾長を務めています。こう並べて書くと、節操のない荒唐無稽な人生に見えるかもしれませんが、どの場面でも共通しているのは、数字とは強い縁があったということです。

 そもそも学生時代に理系の道を選んだのは、数学が得意だったからではなく、数字の表す深淵なる世界に魅せられたからでした。他のどんな言葉よりも雄弁にものを語る言葉としての数字の魅力に気づき、引き込まれたのです。

 指揮者としてプロの音楽家を目指してからも、音楽の美しさの中に数字が織りなす合理性を常に感じていました。また、オーベルジュの経営に参画したときは、日々、売上の数字を読み、事業計画では数字を作っていました。借り入れ金額と利息と支払い回数から複利計算を行い、総支払額を資料にまとめて銀行に提出したら、「どうしておわかりになるのですか?」と驚かれたこともあります(まだ自動計算してくれるサイトは存在しない時代でした)。そして今は、社会人も教える数学塾の塾長として、生徒の皆さんが数字を好きになり、数字に強くなっていく様を間近で見られることに幸せを感じる毎日です。

 なにより、私がそのときどきで気の向くままに、畑違いのいろいろな分野に挑戦する勇気を持てたのは、自分は数字に強いという自負があったからだと思っています。 

 たいていの社会では「数に強い人」は「数に弱い人」に比べて少数派です。しかも数に強い人が、その強みを生かせるシーンは、数に弱い人が想像するより遥かに多岐にわたっています。結果として数に強いことをアドバンテージに感じることが多いので、たとえ未知なる分野であったとしても「なんとかなるんじゃないか」という自信が持てるのです。

 現在のビジネスシーンにおいて最もホットな話題といえば、やはり機械学習とこれを応用したAI(人工知能)でしょう。機械学習とは、人間が行う学習と同等の「学習」をコンピュータに行わせようとするテクノロジーのことを言いますが、その際コンピュータが読み込むデータはすべて数字です。人の好みや感情も数値化されます。そして、機械学習を行うコンピュータが膨大なデータの中から規則性や判断基準を見つけ、未知のものを予測する際に使うのが統計学です。

 2022年度から施行される予定の高等学校指導要領(案)を見ると、統計関連の単元が目を見張るほど多くなっています。これは、現代が人類史上最も「数字がものを言う時代」だからです。ITの技術が進歩し、機械学習のニーズが高まることによって、数字が判断と予測の基準となる世界が急速に広がっています。

 このような時代において、「数に強い」ことがビジネスパーソンにとってどれほど有利な資質であるか、もうこれ以上言う必要はないでしょう。

 私はこれまで20年以上、学生はもちろん多くの社会人の方々も個別指導してきました。「数に弱い人」がどれだけ数字にコンプレックスを持っているかは熟知しているつもりです。この本は、そんな「数に弱い人」に向けて、数に強くなるためのノウハウをマンツーマンで授業させていただくつもりで書きました。
 授業は6時限目まであります。

 第1部「準備篇」では、「数に強い人」になるための3つの条件を明示します。それは、
(1)数字を比べることができる
(2)数字を作ることができる
(3)数字の意味を知っている
です。
第1部は授業に入る前のオリエンテーションのようなものだとお考えください。その後、3つの条件をクリアするのに必要な知識とテクニックを、それぞれ第2部と第3部でお伝えしていきます。

 第2部「教養篇:1時限目〜4時限目」では数字に親しみ、興味を持っていただくことが目的です。「科目」には、汎用性の高さと多面性を考慮して算数、社会、自然科学、芸術の4つを選びました。1時限目の算数では、数字の持つ個性について、2時限目の社会では、日々のニュースを理解し、社会全体を俯瞰する際に核となる数字について、3時限目の自然科学では宇宙を表す数字に付随する単位について、そして4時限目の芸術では数字が体現する美しさについてお話しします。

 続く第3部「技術篇:5時限目〜6時限目」では数字を比較し、使えるようになるためのテクニックを習得していただきます。これらの技術は、数字を使って思いや考えを伝えようとするときには欠かせないスキルです。詳しくは準備篇でお伝えしていきますが、割合や分数といった基本的なところから始めて、最後はフェルミ推定や定量化の方法まで話を進めていきます。

 厳密に言えば数(すう)とは量や順序を表す概念であり、数字はその概念を表す記号ですから、「数」と「数字」は意味が違います。ただし、数を「かず」と読む時は、両者はほぼ同じ意味であると考えていいでしょう。辞書でも「かず」と「すう」は別項目になっていて、「かず」の方には「物の順序を示す語。また、その記号。数字」とあります(大辞泉)。実際、「2桁の数かず」と「2桁の数字」では意味の差はありません。

 私は本書の中で数字が持つ豊かな意味を紹介し、数字の限りない可能性と魅力をお伝えしたいと思っています。本書のタイトルが「数字に強くなる本」ではなく、「数に強くなる本」であるのも、「数字」よりも多様性を感じさせる「数」を使うことで、本書のメッセージを少しでもお伝えしたいと思ったからです。とは言え、この本では今後「数」と「数字」を厳密に使い分けることはしません。どちらも(極めて広義に解釈しながら)同じ意味で使っていきます。

 いずれにしても、本書の目標は読者の皆さんが数字を言葉のように扱えるようになることです。言葉は人の想いや感情を伝えます。数字もまた然りです。数字は人を動かし、時には人生をも左右します。そんな圧倒的な情報量を持つ数字を自在に操る「数に強い人」になってもらいたい—その一念で私は本書の筆をとりました。

 本書を読み終えていただいたとき、あなたはきっと数字が語る豊かな概念を理解し、数字に愛着と自信が持てるようになっているはずです。それは、新しい外国語を身につけて、新しい世界への扉が開くような経験であると同時に、新しい楽器が弾けるようになるような成長でもあります。数字を通して今まで見えなかったものが見えるようになり、思考プロセスの中で数字が最も確かな拠り所になるという知の革命によって、あなたの人生は大きく変わることでしょう!

永野裕之

続きは本書でお楽しみください!

目次

はじめに

◎第1部 準備篇
数に強いとはどういうことか?/数学に強い必要はない/なぜ数字が重要なのか?/数字には物語が必要である/「数に強い人」になるために/誰でも数に強くなれる

◎第2部 教養篇
1時限目 算数
アインシュタイン以上の天才/数字の中にキャラクターを探す/素数/倍数の見つけ方/平方数と立方数/完全数/友愛数/巨大数/1時限目のまとめ
2時限目 社会
これだけは覚えたい4つの数字/GDP/労働分配率/国家予算(一般会計と特別会計)/特殊出生率・出生数・死亡数/2次元目のまとめ
3時限目 自然科学
地球を表す3つの単位/長さの単位/質量の単位/時間の単位/光の速度/3次元目のまとめ
4時限目 芸術
美の中に潜む数字/ピタゴラスと「完全」音程との出会い/ピタゴラス数秘術/ピタゴラス音律/さまざまな音律/古代ギリシャ人と音楽/黄金比は美しい/フィボナッチ数列と黄金比/白銀比/貴金属比・青銅比/4次元目のまとめ/コラ

◎第3部 技術篇
5時限目 数字を比べる

割り算の2つの意味/割り算の意味①:全体を等しく分ける(等分除)/割り算の意味②:全体を同じ数ずつに分ける(包含除)/等分除か包含除か/分数とはそもそもなにか/分数の掛け算/割り算記号の起源/分数の割り算/計算を助ける約分と「逆」約分/割合と比/分数は比べるための最強ツール/比は割合の別表現/比例式と「分数計算のトライアングル」/単位量あたりの量/単位量あたりの量の求め方/割合と単位量あたりの大きさの違い/プレゼンでも活躍する「単位量あたりの大きさ」/演習/演習の解答・解説 
6時限目 数字を作る
概算と誤差/有効数字と科学的表記法/有宇高数字の計算/「最適桁数」は1桁/大きな数の捉え方/フェルミ推定/フェルミ推定の方法/フェルミ推定の後にすべきこと/モデル化について/定量化のための点数付きチェックリスト/物語のための定量化/暗算の9つのテクニック/演習/演習の解答・解説

おわりに

追記(5/17)第1部「準備篇」(全28頁)

第1部「準備篇」(全28頁)も無料公開中です!

追記(5/14)幻の序章

都合によりカットになった幻の(?)序章の冒頭部分を、編集者さんの許可を得て公開しました。よろしければ、ご覧ください。

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永野裕之

『数に強くなる本』関連note

2018/5/24に発売の『東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた 数に強くなる本 人生が変わる授業』に関連するnoteをまとめています。
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