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渡邊雄太のシュート力の向上をデビュー年以来のショットチャートで追ってみるととても感慨深い

前回の投稿に引き続き、NBAのブルックリン・ネッツにてディフェンス&3Pシューターとして大活躍している渡邊雄太選手について記しておきたい。2023年1月9日現時点では規定数に到達せず3P成功率ランキング対象外となってしまっているが、今シーズンの3P 成功率は52.7%(1試合平均試投数は2.7本、成功数は1.4本)と高確率でシュートを沈め、引き続き高精度なシューターとしてチームでの役割を果たしている。(以下スクリーンショットはNBA.comより転載)

ただし、上記スタッツを見てわかる通り、現在のネッツでの地位と評価を確立するに至るまでの間、2018年−19年シーズンのデビュー以降は順風満帆とは到底言い難い道のりであったことは想像に難くない。もちろん渡邊雄太の凄さはオフェンスではなくそのハッスルディフェンスにあることは十分承知しているのだが、ここでは比較的結果の見えやすいオフェンス面でのデビュー以降の彼の進化を、ショットチャートを見ながら振り返っていきたい。少なくとも毎シーズンの着実な進化と、それを裏付けるものすごい努力がそこから感じられるはずである。

1.メンフィス・グリズリーズ時代(2018年ー2020年)

デビュー年の出場試合数は15試合のみ。下記ショットチャートの通り、ゴール下から3Pまでシュートを放っているが、特に3Pについては左ウイングからのシュートはほとんど外れて3Pシュート成功率はリーグ平均以下(2番目のチャートのうち、赤いゾーンをご参照)。ゴール下の成功率についてもリーグ平均程度の成績。通期フィールドゴール成功率は29%。

2年目については1年目と比較し通期フィールドゴール成功率は29%から44%まで向上。しかしながら如何せんフィールドゴール試投数が少なすぎることと、ガベージタイム(勝敗がすでにほぼ決した後で、主力をベンチに下げた後の時間帯)における試投数・成功数も多分に混じっていると推測しており、シュート成功率については適切な評価を下せない、なんとも言えない、というのがこのグリズリーズ2シーズンにおける総括だろうか。

2.トロント・ラプターズ時代(2020年ー2022年)

2018-2019シーズンのNBAチャンピオンチームであるトロント・ラプターズにに移籍した渡邊雄太は、ニック・ナース監督にそのディフェンス力を見出され、徐々に出場試合数と出場時間も増えていく(以下表ご参照)。そして、シュート試投数も大幅に上昇、成功率もアップ。シューターとしての才能を開花させた2年間だった。

ラプターズ2年目のシーズン、2021年−2022年のショットチャートは以下の通り。この頃から、3P シュートについては左ウイング、左コーナーの成功率が向上していく。推測だが、チームオフェンスのファーストオプションであるパスカル・シアカムやセカンドオプションのフレッド・バンブリートによるドライブからのキックアウト→左ウイングで待ち構えてキャッチ&リリース3P シュート、というオフェンススタイルが確立されてきたのがこのあたりだったのではないだろうか。


3.ブルックリン・ネッツ時代(2022年ー現在)

左コーナー、右コーナーからの高確率スポットアップシューターとしてのオフェンススタイルを確立し、大きく飛躍した今期。左コーナーからの3P成功率(72.7%)、右コーナーからの3P成功率(60.0%)はリーグ平均(左コーナー:38.3%、右コーナー:38.1%)を大きく上回っている。ここまでシューターとして成長できたのは、彼自身の努力はもちろんネッツのオフェンススタイルにピッタリとはまることができたことも大きい。現役最高のスコアラー、ケビン・デュラントがペイントエリア近辺で敵を引きつけ、ディフェンスがしぼんだところで外でオープンになっている渡邊にパスし、3Pを放つ、というオフェンスの場面は今期何度も見られるシーンだ。なお、ご参考までだが今期渡邊はチームメイトから累計62本のアシストを受けているが、そのうち最も多くのパスを受けているのはケビン・デュラントの15本である(以下、プレイヤー別アシスト数が記載されているスクリーンショットをご参照)。

今期(2022年−2023年)、渡邊がチームメイトから受けた累計アシスト数。最も多いのはケビン・デュラントの15本、その次はベン・シモンズから10本。天上天下唯我独尊系オフェンスを貫くカイリー・アービンからも5本のアシストを受けている。

デビュー以来、もともと得意であったディフェンス面に加え、オフェンス面で着実な進化を遂げている渡邊雄太。今後、3P&ディフェンスの職人型プレイヤー、更には2ウェイプレイヤーとして成長していくだろう姿が楽しみでならない(2ウェイプレイヤーまでの道のりはまだ長いかもしれないが)。と同時に、本来の彼の持ち味であるディフェンス面の定量データについてもいつか示すことができればと思っている。

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