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最後の東京帰省日記 (完)

 前回の続き

 気持ち悪さの原因が分かったのは、まさにこの日記のタイトルを考えている時だった。前回同様「東京帰省日記」をつけることは決まっていたが、なかなか良いタイトルが出てこない。「東京帰省日記 2023」「続・東京帰省日記」「東京帰省日記'23」など、考えてみるも、どうもしっくりこない。しばらく頭を捻っていると、突如「 ”最後の” 東京帰省日記」というタイトルが浮かんだ。

 そう、自分はこれを最後にしたかったのだ。

 過去にばかり目をむける帰省を、終わりにしたかった。薄々気づいてはいたが、自分は東京に帰る度に、「懐かしい場所」を訪れてばかりいる。だからこそ「新しい場所」が思いつかない。大学、会社、東京という世界。人生が好転し暗転した世界。自分は、昔に囚われている。心の奥底で、過去に固執している。良かった思い出は、自尊心を取り戻すものとして。辛かった思い出は、美化して追憶にふけるものとして。かつて東京で討ち死にした自分の亡霊は、今も成仏せずに心の中で巣食っている。ずっと知ってたけど、あまりにかっこが悪いから、知らない顔をしていた。でも、今回の帰省で、はっきりさせられてしまった。

 もう、過去に帰るのはやめよう。懐かしい場所を訪れるのはよそう。

 価値観を広げて囚われから解脱するのが良いのか。長崎で戦って亡霊を成仏させるのが良いのか。どちらが答えか今はわからない。しかし、過去に帰るのだけは、もうやめる。先に進もう。

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