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「条例だから、この金額でお願いします」の罠

みなさんこんにちは。
鹿児島でまちづくりの会社を経営しています永山(nagayaaan)と申します。

地域に入って町のビジョンづくりのファシリテーションをしたり、クラウドファンディングの設計のお手伝いをしたり、小さなビジネスが生まれる道筋を作るお手伝いをしているのですが、仕事柄、講演依頼はかなりのボリュームでいただきます。

県外からの講演依頼は年間一本に絞っていることもあり、県内からのオファーはできる限りお受けしようと思っていますが、ちょっと今年は業務量的にも絞らざるを得ない状況だったりします。

そんな中で、今回は謝金の水準のお話。


「条例なので、この金額で」の罠

行政機関からの講演依頼で、こんなお願いのされ方をすることはよくあります。

「市の(または、県の、町の、)報酬及び費用弁償に関する条例で、報酬の額について定められておりまして。講師:大学教授級 1時間につき6,100円以内でお願いします」

この条例って、すごいなと。

鹿児島県も広いので、遠い市町村になると片道2時間、往復で4時間かかる場所もあります。到着してすぐに講演、となるわけもなく、だいたい本番の30分前に入り、終わって30分ほど事後対応してから出るとなると、1本の講演で丸1日つぶれるといったことも少なくありません。

で、丸1日かけて、6,100円というのは、ちょっとさすがに厳しいなと思うのです。

ちなみに、講演の内容を高めようと思うと、当然ながら事前準備にもかなりの時間をかけます。少なくとも数時間。大きい場になると、10時間以上かけたりします。

そういった部分を勘案すると、もはや完全にボランティア水準です。(これで交通費も出ないという場面もあります。)


「ほぼボランティア」な仕事であっても、こちらからお願いしてお受けするものも。

こういった「ほぼボランティア」のような条件の仕事は、実はめちゃくちゃたくさんあります。

個人的には、こういった種類のお仕事も、とても意味があると思います。例えば、「①その仕事を受けることが実績として必要な場面」。または、「②金額関係なく、その仕事はやりたいと思える場面」。

いずれも、受ける側である自分自身がその仕事にどのような意味や価値を感じるか、が判断基準になります。

とくに「②金額関係なく、その仕事はやりたいと思える場面」になるかどうかは、発注いただく方の熱意や思いによる部分が大きく作用します。

事務的なご連絡をさらりといただき、「謝金は規定の水準なので6,100円でお願いします」と、当たり前のように言われてしまうと、なかなか厳しいものがあります。

ファシリテーションやコーディネートを仕事として担える人を増やすために、僕にできること

僕はいま、プロのファシリテーターとして、またはコーディネーターとして、各地でお仕事をさせていただいています。

なぜ、この取り組みが仕事として成立しているのか、それはしっかりと対価をお支払いくださるクライアントの皆様がいらっしゃるからです。(いつも本当にありがとうございます)

しっかりと対価をいただく。これは本当に大切です。


いただいた対価に見合う、またはいただいた対価以上のパフォーマンスを発揮しつづけることで、ファシリテーションやコーディネートというスキルの社会における信用を高める。

そして、これらの担い手が仕事として活動ができる環境をつくること。

そのためには、あまりに安価な金額提示に対しては、いったんきっちりとこちらの定価水準をお示しし、そのうえで大幅な割引対応をするだけの理由を探すことになります。

自分があまりに低い金額でお仕事うけることは、この仕事の価値を下げてしまうことになるという強い危機感を持っているということです。

条例を乗り越えて、しっかりと対価を払ってくださる方の存在

とはいえ、市町村でも、県でも、条例でさだめる額を超えて、しっかりと対価をおしはらいくださる場合もあります。

・単発の講師としてではなく、委託業務としてプログラム設計や企画に対しての対価を計上してくださったり

・講演でお話した内容をまとめてレポートの形で納品する形で制作物に対する対価として計上いただいたり

行政内のルールの中で、ノウハウやスキルに対して適切な対価をお支払いくださるために、知恵を絞っていただく場面を見てきました。

そのような熱い、ありがたいクライアントを見ているからこそ、「条例だからこの金額でお願いします。以上。」というご連絡には、ノールックでお断りしたいという気持ちがふつふつと湧いています。

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ということで、長々と書きましたが、こんなことを書いて大丈夫だろうか、と思いつつ、同じような悩みを抱えている僕よりも若いファシリテーターやコーディネーターたちを後押しするために、こちらの記事を書きました。


幸い、僕は、この仕事を職業として生きることができています。

3年後、5年後、この仕事がより多くの人の手によって分担され、ファシリテーションやコーディネートの仕事で生きていける仲間が増える未来のために。

僕も僕にできることを、粛々と発信していきたいなと思っております。


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