梵鐘 (ぼんしょう)
梵鐘は時を知らせ、人を集めるために寺に設置されている鐘(かね)です。 「梵」は梵語(サンスクリット語)のブラフマン(brahman 神聖・清浄)の音訳です。 多くが青銅(銅とスズの合金)の鋳造品で,鐘楼や鐘楼門に吊るし,撞木(しゅもく: 突き棒)で鳴らします。
3古梵鐘(制作年が明らかな鐘)
鐘に刻まれた銘で鋳造年が明らかである場合と文書などの研究により確かであると考えられる場合を含め、1000年以上前に鋳造された鐘が今も16口*1残っているとされます。
飛鳥時代
京都 妙心寺の鐘は、制作年が戊戌年(698)で国宝に指定されています。徒然草にも登場する鐘です。「凡(およ)そ鐘の声は黄鐘調(おうしきじょう)なるべし これ無常の調子 祇園精舎の無常院の声なり 西園寺(さいおんじ)の鐘、黄鐘調に鋳(い)らるべしとて、あまた度(たび)鋳(い)かへられけれども、かなはざりけるを、遠国(おんごく)より尋ね出(いだ)されけり 浄金剛院(じょうこんごういん)の鐘の声 又黄鐘調なり」
奈良 當麻寺の鐘は、制作年不明ですが飛鳥時代に鋳造されたと考えら、国宝に指定されています。
奈良 法隆寺西院の鐘は、制作年不明ですが飛鳥時代に鋳造されたと考えら、重要文化財に指定されています。
奈良時代
奈良 興福寺の鐘は、制作年が神亀四年(727)で国宝に指定されています。通常非公開
福井 劔神社の鐘は、制作年が神護景雲四年(770)で国宝に指定されています。
千葉 成田市八代椎木出土の鐘は制作年が宝亀五年(774)で国立歴史民俗博物館に所蔵されている重要文化財です。
福岡 観世音寺の鐘は銘がありませんが京都妙心寺の鐘と同じ鋳型から造られた鐘とみられていて国宝に指定されています。菅原道真が「都府楼は わずかに瓦の色を看る 観音寺はただ鐘声を聴く」と歌ったことで知られる鐘です。
奈良 新薬師寺の鐘 制作年不明 重要文化財指定 奈良時代に鋳造されたと考えられています。
滋賀 園城寺の鐘(三井寺 みいでら) 制作年不明 重要文化財指定 奈良時代に鋳造されたと考えられています。「弁慶の引き摺り鐘」との別称あり
奈良 法隆寺東院の鐘 制作年不明 重要文化財指定 奈良時代に鋳造された旧・中宮寺の鐘とされています。
奈良 薬師寺の鐘制作年不明 重要文化財指定 奈良時代に鋳造されたと考えられています。
平安時代
京都 大雲寺の鐘 制作年:天安二年(858) 国宝指定 佐川美術館所蔵
京都 神護寺の鐘 制作年:貞観十七年(875) 国宝指定 一般非公開
高知 延光寺の鐘 制作年:延喜十一年(911) 重要文化財指定
奈良 栄山寺の鐘 制作年:延喜十七年(917) 国宝指定
奈良 大峯山寺の鐘 制作年:天慶七年(944) 重要文化財指定 銘は追刻で、鐘自体は奈良時代の作とされる
日本3大梵鐘
クラプロート氏*2が「モスクワの大鐘のおよそ5倍の重さで909トン」と記した鐘は、京都「方広寺」の梵鐘だと思われるのですが、この鐘は「日本3大梵鐘」の一つとされ、高さ4.12m、口径2.227m、厚さ27cm、重量82.7tという慶長19年(1614)に鋳造された鐘です。
なお、明治時代初頭の重さの単位ポンドと現在のポンドが異なるのかと確かめてみましたが、「明治14(1881)に1ポンド=120匁(450g)1オンス=7匁5分と薬種商組合が司薬場に申し出て決定」とあるので、今と変わりはありません。
京都知恩院の鐘
鋳 造 寛永13年(1636)
高 さ 3.3 m
口 径 2.8 m
厚 さ 30 cm
重 量 70 t
奈良東大寺の鐘
鋳 造 天平勝宝4年(752)
高 さ 3.86 m
口 径 2.71 m
重 量 26.3 t
京都方広寺の鐘
鋳 造 慶長19年(1614)
高 さ 4.12 m
口 径 2.227 m
厚 さ 27 cm
重 量 82.7 t
現在最も大きいと宣伝中の鐘
熊本玉名蓮華院誕生寺
鋳 造 昭和51年(1976)
高 さ 4.55 メートル
口 径 2.88 m
重 量 37.5 トン
今はもう無い鐘
大阪四天王寺の鐘
鋳 造 明治36年(1903)
高 さ 7.86m
口 径 4.83m
厚 さ 66cm
重 量 157.5t(計画時) 完成時には設計変更して64トン
* 昭和18年(1943)に金属供出され今はありませんが残っている写真を見るとその巨大さに驚きます。
* 四天王寺「新縁起」第36回 「世界一の大梵鐘」に詳しい
* 【調査報道の源流】今に残るは名菓のみ/四天王寺・大釣鐘のその後/宮武外骨「滑稽新聞」№48も面白い
*1 鐘を数える単位は「口(こう)」「口(く)」あるいは「鐘(しょう)」と言います。小さい物を数えるときには「本」「個」とも言うようです。
*2 クラプロート(Julius Heinrich Klaproth 1783-1835)」 「ザ・ファー・イーストを読む その1-2」をご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?