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【スタンダード】緑単アグロ パーフェクトガイド

はじめに

皆さんこんにちは。BIGsの斉田(@mtgnage)です。

先日「緑単アグロ」を使用してセカコロ決勝大会進出&アリーナオープンにて賞金10万円を獲得できましたので記事を書きました。

これからヒストリックにも忙しくなるタイミングですが、スタンダードも10月30日-31日のRed Bull Untapped予選[Japan Time]を筆頭にまだまだ大会が控えています。

それらに向けて「緑単アグロ」を使いたい方はもちろん、相手にする上で緑単側が何を考えているかを知りたい方にも有益な記事になっています。途中より有料となりますが、ぜひ最後までお付き合いください。

現在のスタンダード -そもそもなぜ緑単は強いのか-

現環境になってからトップメタとして君臨し続けている「緑単アグロ」ですが、陥落しないのには理由があります。

よくあるMTGの相性としてアグロ←除去ミッドレンジ←打ち消しコントロール←アグロの三すくみがあります。アグロデッキは通常であれば除去がたくさん入っているデッキを苦手にしますが、現在の「緑単アグロ」はその手のデッキへの耐性が極端に高いのです。

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具体的には《レンジャー・クラス》《老樹林のトロール》《エシカの戦車》《レンと七番》《不詳の安息地》というラインナップ。カードパワーが高く、メインボードから無理なく採用されているこれらのカードの除去耐性が相性差をひっくり返しています。

もちろん《群れ率いの人狼》から始まる攻めのパターンも健在なので、打ち消しコントロールにもしっかり有利が付きます。

これだけ聞くと最強無敵のようにも思えますが、当然そんなことはありません。緑単への戦い方として有効なものが大きく分けて2パターンあります。

1つ目は『イゼット・ドラゴン』及び『イゼット天啓』が行っている「要所だけ除去して、攻守を切り替えて攻め切る」という手法です。

除去耐性が高すぎて全てを受け切ることが難しいので、序盤を捌いたら攻撃に回ることが緑単に勝つ道になります。具体的に言えば火力やバウンスからの《黄金架のドラゴン》or《アールンドの天啓》《感電の反復》コンボの流れがそれにあたりますね。

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緑単への有効な戦い方の2つ目は『白単アグロ』が実践している「飛行と手数」を駆使した攻撃。

緑単の対アグロ面での弱点は「飛行を止める手段に乏しい」ことと「1マナ域の不足」です。

格闘除去以外で飛行を止められるのはメインボードだと《レンと七番》くらいですが、5マナと大振りなため早いターンには間に合いませんし、出したとしても《ポータブル・ホール》や《運命的不在》の格好の標的になってしまいます。

また、1マナ域にクリーチャーがいないため最序盤から効率よくマナを使って攻められると受け切れない状況に陥りやすいです。

以上の2パターンが緑単に明確な活路を見出しているため、今のスタンダードは『緑単アグロ』『イゼット系』『白単アグロ』の3強になっています。

そしてもう一つ、直近の大会で結果を残しつつあるのが『ティムール宝物』。世界選手権でJean-Emmanuel Deprazさんが使用したリストが原型になっています。

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火力からの《黄金架のドラゴン》のラインと《ヤスペラの歩哨》《厚顔の無法者、マグダ》による手数があるのは魅力ですが、パーツがマナ加速とフィニッシャーに分かれすぎていて引きムラが起こりやすいことと、3色かつタップインも許容しづらいのでマナベースには難ありといった印象。

まだ世に出てからの研究が進んでいない部分もあるので、これからさらにブラッシュアップされたら3強デッキ(Tier1)に肩を並べるかもしれません。現時点で唯一のTier1.5だと思います。


緑単の各カード解説

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さて、ここからはいよいよ本題の『緑単アグロ』のデッキ構造を紐解いていきます。

手っ取り早く上位メタへのサイドボーディングだけ知りたい方もいらっしゃるかもしれません(僕もそういう時あります)が、是非各カードの性能と特徴を把握していただきたいと思っています。

というのも、今回大会に参加して対戦したデッキはTier1~Tier1.5デッキが合わせて7割でやはり多いものの、逆に言うと3割はその他のデッキでした。

全てのデッキへのサイドボーディングは記載できないため、多少のアドリブ力が問われますが、各カードの役割をきちんと分かっていればそこまで難しくありませんので、1枚1枚確認していきましょう。

【2マナ域】

《レンジャー・クラス》

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キープ基準その1。それでありながら後半引いても腐らないレベルアップが頼もしい。除去を多く撃ってくるデッキにはこれを引くだけで一気に戦いやすい盤面を作れるほどのカードパワーがあります。

しかし、書いてあることを噛み砕くと「2/2/2を出す・マナを払うと攻撃強化・さらにマナを払うとアドバンテージ獲得の可能性」なので対アグロの守備面が弱点です。

対アグロでは使えるマナをまずは盤面の掌握に向けるため、レベルアップする余裕が生まれにくいです。サイド後は先手でも1枚程度、後手だと2〜3枚のサイドアウトが検討されます。

加えてレベル3の能力はデッキ構造上このカードを含め《エシカの戦車》《レンと七番》という「クリーチャーを出す非クリーチャー呪文」が多いので過信は禁物で、他にマナの使い道があるなら無理にレベルアップする必要はありません。

《群れ率いの人狼》

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キープ基準その2。緑単である最大のメリットと言えるカードで、相手のデッキや先手後手に関わらずサイドアウトすることはありません。

打点が高いので早く出したくなりますが、イゼットなど2マナ火力の豊富なデッキには極力《蛇皮のヴェール》や《豊穣の碑文》を構えて出せるようにします。

もちろん2ターン目に出すしかない展開もありますが、選べるなら《レンジャー・クラス》からプレイしたり、3マナアクションが無くて《蛇皮のヴェール》を持っているなら出すターンを遅らせることも考慮します。

《冬を彫る者》

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キープ基準その3。以前は《水蓮のコブラ》が使われていましたが《吹雪の乱闘》をプレイする際に氷雪パーマネント数を稼げる(特に《カザンドゥのマンモス》を土地として置くと不足しがち)のと、純粋な土地の枚数がアグロなので多くはなく、上陸でマナを出して殴れるメリットより、タップしてでもしっかりマナが増える方が嬉しい場面が多いためこちらが優先されています。

また、タフネスが2であることも重要で《棘平原の危険》で倒されないことや《不自然な成長》を張った時に4/4になることがあげられます。《不自然な成長》は同系で強いカードですが、せっかく出しても《水蓮のコブラ》の4/2というスタッツでは相手の2/2トークンと相打ちになってしまいます。

サイド後は相手のデッキに全体除去が入っている場合、たくさん引いても出しにくいので1枚程度減らします。

ここまでの3種12枚が緑単の主なキープ基準です。安定して初手に来ると言える最小枚数は14枚が通説とすると少し足りないので、ここからはその不足分を補うカードになります。

《辺境地の罠外し》

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メインボードに0〜2枚、サイド含めた75枚に2〜3枚の採用が一般的です。

一番有効なのは対白単。前述の通り負け筋は飛行、つまり《スカイクレイブの大鎚》なのでキープ基準でありながらそれを対処できるのが偉いです。

次に有効なのが緑単同系で、主に《不自然な成長》による負けを防ぎます。

また、以前は「《エシカの戦車》対策として有効ですか?」と聞かれたら「トークン分で損するのでNoです」と答えていましたが、最近意見が変わりましたので訂正させていただきます。

先手の《エシカの戦車》のマウント力は尋常ではなく、後手で同じ動きをしても相手だけマナが使える状態でのアタック→トークン生成で不利を覆せません。

《エシカの戦車》自体を《辺境地の罠外し》やサイド後の《タジュールの荒廃刃》で睨み、2/2トークンは盤面の3/3や4/4に止めてもらうことで極端なマウントを防ぐことは有効であると判断し、以前までは相手の《不自然な成長》の枚数が少なければサイドアウトしていましたが、今は後手番では残すようにしています。

ここまでだと《辺境地の罠外し》はメインの採用で問題なさそうですが、対イゼットでは活躍が見込めません。

相手は序盤構えることも多いデッキなので反転は幾分かしやすいかもしれませんが、肝心の能力で壊したいものが宝物トークンくらいしかありません。

なのでメインの《辺境地の罠外し》の枚数は、イゼット系が多い間は1枚以下に抑え、白単と緑単が増えていると感じたら2枚にするのが良いでしょう。

《絡みつく花面晶体》

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ここまで紹介した2マナ域の中で一番弱いカードですが、役割はとてもハッキリしています。

結論から言うと「キープ率の上昇に貢献しつつ、2ターン目にプレイしないのであれば、90%土地として置くことになるカード」です。

「キープ基準が足りていないなら元々スタメンを争ってた《水蓮のコブラ》を数枚足すので良いのでは?」となるかもしれませんが、土地として置けることは意外と重要になります。

まずは《カザンドゥのマンモス》の上陸誘発、もう一つは相手の《燃えがら地獄》を活用させないためです。

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今の緑単はタフネスが高いため《燃えがら地獄》は効かないと考えていますが、人によってはサイドインしてくることもある微妙なラインであることも確かです。

つまりこれ以上巻き込める生物が増えてしまうと効きやすく、入れやすくなります。中盤引いてしまった《水蓮のコブラ》はパワーが2あることもあって基本的には出して殴るしかありません。

《絡みつく花面晶体》は1/1と戦闘性能があまりにも低く「次ターンにチャンプブロックをする」など明確な目的がない限りは土地として置くのが正解であることがほとんどです。土地はやや余り気味でも《老樹林のトロール》のトークン生成で後々減ることも多いので許容できます。

とは言ってもタップインの土地なのであまり強くはありません。3種12枚のキープ基準にメタに合わせて《辺境地の罠外し》の枚数を決めて、14枚に至らない分を《絡みつく花面晶体》で埋めるのが良いでしょう。

【3マナ域】

《老樹林のトロール》

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《群れ率いの人狼》に次ぐ緑単である大きなメリットで、これも相手や先後の如何を問わず、サイド後減らすことはありません。

《老樹林のトロール》がいる時はマナの使い方を慎重に検討します。例えば5マナあって《老樹林のトロール》をプレイしたら余った2マナで《レンジャー・クラス》をレベルアップして2/2でアタック…ではなく「相手が《轟く叱責》や《家の焼き払い》を撃ってくる可能性はどれくらいあるか」を考慮し、対処されたら《冠雪の森》にエンチャント→トークン生成でまた攻撃に行けるようマナを残す選択肢を見据えましょう。

相手の行動とゲーム展開を予測しながら、無駄のない攻めが継続できるように意識します。

《カザンドゥのマンモス》

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マナスクリューを回避しながら、クリーチャーの頭数も確保できる便利なカード。緑単は除去が格闘なのでクリーチャーが1体でもいいから場にいるかいないかは大きな差があります。

デッキを円滑に回すうえで頼もしい存在ではありますが、もちろん弱点もあります。

まずは2マナ火力が豊富なデッキ、つまりイゼット系に対してです。先手3ターン目のクリーチャーを後手2マナで綺麗に対処されるとテンポを取られ、先手の利が減少します。

もう一つは対アグロの後手番です。先手は5/5で攻めることが出来ますが、後手は守る側なので3/3/3という平均スタッツではちょっと物足りない。

以上のシチュエーションではサイド後1~2枚減らすことを検討します。土地の枚数自体は足りているのでそこは気にせず、純粋に目の前のマッチアップにおける活躍度合いで判断して問題ありません。

【4マナ域】

《エシカの戦車》

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勝って知ったるスタンダードの「監視対象」カードで、相手に出されると絵柄は幸福でも盤面は絶望です。

サイドアウトすることもほぼないのですが、前述の通り同系で後手だと相手と同じ動きをしても勝てない&手数を増やす必要があるので1枚だけ減らしたりします。

【5マナ域】

《レンと七番》《不自然な成長》

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バランスは人それぞれですがメインに合わせて2〜4枚、サイドに追加が1枚程度用意されていることが多いです。

基本的には《レンと七番》のほうがカードパワーは高いものの、同系で強いのは《不自然な成長》と認識されている方が多いのではないかと思います。確かにその通りですが、では《レンと七番》は同系で弱いのかと言われるとそんなことはありません。

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