玉子と白眼


『とける、とろける』 唯川 恵



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とろけるような快感の先にある落とし穴。落ちる為だけのものでなければ、埋められた瞬間のオーガズムを与えてくれる為だけのものでもない。ふたつでひとつと言わんばかりに理屈に欠けるのに、それは内緒にして置こうよ、と突っ込みたくなるほどリアル。



『眼球譚』 オーシュ卿(G・バタイユ)



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エロティシズムと死。相反するようなものこそ一つに重なる瞬間がある。余白のない恍惚とした黒目を今にも飛び出しそうな勢いで備え(寧ろ備えるというよりも糊で付いているだけでポロッと取れてしまいそうな)息を乱した牡牛に全身を舐められているよう。痴女の一つ覚えみたいに著された若々しさ、ねっとりと纏わりつく悶々とした回りくどさを悲喜劇的に遂行し、ただ淡々とそれはそこに在る。



『人間失格』 太宰治



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到底自分には分かり得ないという感情も、彼は手の平で弄ぶ。弄ばれているのに心地いい。誇張されているとは言えどもこの手記(遺書)に虚言はない。果てに罪の対義とは何かを考える。『善悪の概念は人間が勝手に作った道徳の言葉』と嘆く彼もまた一人の人間として。愛おしい。



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