浮気しました(2)

そして、日本に帰ってきた彼。

ラインの相性が良かったのもあってか、その頃には大分、距離が縮まっていた印象。

時差もあったのだけど、お互い眠れない夜とか、移動中とか、タイミングがあった時は、リアルタイムで会話のようなラインをしていた。送ったらすぐに既読になって、返信が返ってくる。そのやり取りが、楽しくて、眠れなかった。

「なんで起きとん」

「なんか眠れなくて 笑」

「普段何して遊んどん?」

「カラオケ行ったり、ボーリングしたり」

私に興味がなければ、終わらせるチャンスはいくらでもあった。会話を終わらせようと思えば終わらせられるように、私も追い詰めはしなかった。

スタンプだけの返事を送ったりもした。スタンプになんて、コメントのしようがないこともある。それで終わったら、寂しいけどそれでしょうがないと思っていた。同居人も、まだいるわけだし、それを理解してもらえるとも思わないし。

そんなこんなで、英語を教えてほしいという話や、その代わりにお土産をちょうだいという話や、将棋の勝負をしようとか、一緒になぞ解きをしようとか、会うための口実になりそうな話題をいくつか仕込み、笑

「今から帰るよー」という連絡が。

転勤で今の住所に来たのもあって、車を持っていないという彼。海外旅行の荷物なんて、ものすごく多そう。

「駅から、手伝おうか?荷物運ぶの」

「手伝って 笑    でも、明日から仕事やから、めっちゃ寝なやばい」

「いいよー」

「ホンマに来るん?笑」

そして、「でも洗濯もせな」「ひげ剃ってない」「パンツみられるのやばい」「顔死んでるで 笑」と、彼は渋ってましたが、

本気で嫌がってないと踏んだ私は「だいじょぶだいじょぶ」と強行し、会いに行ってきた。

二人で会わなきゃ始まらない。そう思っていたから。

本当に嫌なら、「いや、今日は疲れてるから無理」って言ってくれれば絶対に行かないし、何時の電車に乗るかも言わなければいい。

恋って、一人よがりな片思いは、簡単にできる。いくら、素敵だなぁと思ってても、二人で会ってみたらなんか違った、イチャイチャしてみたらなんか嫌な感じがした、そんなこと全然ある。

だから、覚悟はしていた。もしかしたら、会ったら幻滅するかもしれない。

顔や雰囲気はもう知ってる相手とは言え、実際のところ、皆で一度会っただけで、大してよく知っているわけではない相手。タバコを吸うのかどうかといったことに加え、女性(特に私と)と一対一で会った時に、どういう言動をする人なのか、疲れてる時の様子や態度、そういう部分は未知数過ぎて、どっちに転ぶこともあると思っていた。

そしてそういう所は、絶対に、二人きりで会ってみないと何とも言えない。

私の最寄り駅を通る電車に乗っていた彼。途中から合流して、隣に乗り込み、「お疲れー。笑」「疲れたー。笑」ゆるい雰囲気。

一緒に10分くらい電車に乗って、彼の最寄り駅へ。ホントに行っていい、って許可をもらった後、自分の家でシャワーを浴びてる時、駅で電車を待っている間、ずっとドキドキしていた。

どうなるんだろう。泊って帰ってくるのか、終電で帰るのか。

待ち合わせは夜の20:30。終電は23:30。帰れなくはない時間。

久しぶりだった。デートに向かう、ときめき。この後起こるかもしれない恋愛を想像して、わくわくドキドキする感覚。嬉しいのに、楽しみなのに、どこか怖くて逃げだしたくなるような感じ。

どんな顔して待ってたらいいのか分からなくて、いたたまれない気持ち。

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