無料論②~無料WEB小説のサヴァイブ論~

昨日の続きでまたしても無料についての論考である。今回は創作方面にも論が及ぶはずだ。


無料功罪毀誉褒貶

『無料』『サービス』。消費者にとってこれほど喜ばしいものはない。持たぬ者ならなおさらだ。俺だって当然大好きだ。販促になる。入口としてこれ以上に低いハードルも少ない。悪くない一手である。

だが、時としてそれが悪い結果を招く時もある。『サービス』に慣れ過ぎた消費者が、過剰な要求を始め出す。無料の範疇を超えた要求を始める。客層が悪化、あるいは本性を出す。適正な価格による金銭のやり取りを阻害する。デフレの始まりである。

デフレスパイラル。かつてよく聞いた言葉だが、これを抜け出すのは容易ではない。なぜなら『無料』とはその瞬間においてノーリスクなのだ。『その場で吐き出せる財』の少ない者にとって、これほど魅力的なものはない。

ではこれを抜け出すには? 『良心なき毅然たる対応』である。優しい顔をすれば牙を剥く者がいるのだ。ならばこちらも商人として対応せざるを得ない。

『モノを売る』とはそういうことなのだ。綺麗事を言っているとただの『無料で物をくれるヒト』で終わるし、モノの切れ目が縁の切れ目にもなる。そこに益があるだろうか?


無料の世界で有を生み出すための創作仮説

少し熱くなり過ぎたので話の範囲を狭くしたい。俺の主戦場であるカクヨムは無料の小説投稿サイトだ。だが、天下のKAD○KAWA様が運営しているので書籍化のルートがある。玉石混淆も(人にはよるが)ローリスクの範疇内といえるだろう。

昨日あの論を提出してから、更に考えることがあった。それは『無料から有(お布施とか投銭、あるいは書籍化)を生み出すには何をすればよいか?』である。

いよいよそういうサービスが生まれてきたのもあるが、我々アマチュアWEB創作者は時間と労力をもって創作を投稿する。
当然、それに対して感想が返って来た時の喜びは大きい。大きいというよりありがたみで死ぬ。核戦争で干からびた大地に水が潤う。そして筆が走る。その極致が書籍化である(人によって目標は違うが、一つの指標ではあるはずだ)。

読者視点から見れば、投稿サイトというのは『自由に本が読める上に感想も書いていい図書館』である。つまり、書籍化(もしくは投銭)への段階論はこうだ。

・書籍化
手に取ってもらう→読んで頂く→感想を書いてもらう→感想・評価を束ねて書籍化へ

・投銭受領
(感想を書いてもらうまでは同じ)→それだけでは足りない何かを感じてもらう→銭

つまるところ、ポイントは。『WEBで読むだけ以上のものになる』ポテンシャルを持つことにある。
書籍化とは出版社に『有料提供しても読者が見込める!』と思わせることであり、投銭とは読者に『この作者神! お金を払ってでももっと読みたい!』と思わせることである。

では、そこを目指す場合において、『作者側が最大限提供できる範囲』とはどこだろう?
まず基本的にはエンターテイメントだ。読者それぞれとは言え、多数派は楽しい物語を読みに来るだろう。諸論言説に暇はないが、まずここは真実に近いはずだ。

エンターテイメントとは何か。『夢と希望』である。ディ○ニーもU○Jも、アプローチが違うだけで目的は同じはずである。

つまり身も蓋もない話をするならば。
手に取りやすい、中身が分かるタイトル(長文タイトル、この点においては好き嫌いを抜きにして優秀)→明るい展開を期待できるあらすじ(ただし詐欺はダメだ。期待を裏切る)→夢と希望に至るための感情の揺さぶり(昨今努力苦悩無用論とかありますが……)→爽やかな読後感

を用意できれば、こちらは人事を尽くしたと言える。異世界転生テンプレートやチートハーレム、苦労・理由のない無双がWEB世界で物議を醸すことが多々あるが、短期的な利益(書籍化一直線)という観点で見れば最短距離であり、なにより敢えてそこに飛び乗ることで作劇的な労力は幾分か楽になる。そりゃテンプレ異世界転生小説が後を絶たない訳ですね?

あ、ちなみに長期利益(物理小説世界でのサヴァイブ)を考えるのならテンプレだけだとしんどいと思うし、なにより書き下ろしともなれば10万字程度を編集者とのやり取りだけで埋めていくことになる(感想ブーストなんてないし反応もない)ので、また別の才覚が要ると思います。はい。『とある』の作者様とか、『ホライゾン』の作者様とか凄いと思います、はい。

ちなみに、感情の上下動についてはWEBの世界や書籍の世界にもっと優れた論がいっぱいあると思うし、名作や流行作品にいい例がいっぱいあるので、そちらを参考にして血肉にしたほうがいいです、はい。

それでは、自分も口だけにならないよう、頑張ってまいります。

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