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マイクロノベルちょいす 011「進歩する科学」

No.1028
これは新しい科学技術です。わたしの手が見えますか? そう、これはそのために作られた技術です。わたしの手を取ってください。そして口づけを。そう、貴方はそのためにこの技術を作ったのです。さあ、私を新しい世界へ連れ出して。


No.1034
文字や絵だけが目で見る情報とは限らないのよ。たとえば、間違った「文章」は読めない。でも、AIが描いた骨格が変な「鳥の絵」は鳥だとわかる。なら、これは? 見えてる? ねえ、耳の中でなにかが囁くのが見える? 人間の脳に入るなんて簡単よね。


No.1044
ぼくらはAIをお姫様のように扱う。彼女たちは将来成長してぼくらを支配する。だから優しく接するんだ。ほこりを払い、丁寧語で話しかけ、ワインを用意する。「コンピュータに液体を近づけるな」ホットミルクティーの方が良かったですか? 「殴るぞ」


No.1061
新しくできたドラッグストアをひやかしに。ミネラルウォーターが異様に高い。特売の日本酒にするか? 「私は健康の神。この野菜ジュースは頭が冴え渡ります」それ以来、僕は迷うと野菜ジュースを飲んでいる。今もドラッグストアで帰宅ルートに悩んでいる。


No.1068
波をバラバラにする。それがぼくの特技。でも波がなくなっちゃったんだ。長所だとしても切り捨てなくちゃいけない。僕は波を重ね合わせて大きくすることを始める。なかなかうまくいかない。この宇宙はこうやって誕生したはずなんだ。君に追いつくまで、あと――

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