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マイクロノベルちょいす 004「まるかじり」

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夜風を求めてベランダに出たら先客がいた。月明かりに輝く黒い毛並みに惹かれて、持っていた桃を食べさせてしまった。「馳走になった。夜が明けたらまた来い」言いつけ通りにすると、絹のような手触りの黒いハンカチが。風に吹かせると笛のような音が鳴る。


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いざ侵入。愛しのバーチャルアイドルのデータを奪うため、ぼくらは未知のコンピュータをハッキングする。協力すればハートだって盗めるはず。速やかにボーンを奪取。美しいネイルをゲット。知性は? 「ない」未知の警報が鳴っている。「最初からない」


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情報がドーナツ化するなんて言うけど、あれは見えてないだけだろ? 本当は穴なんてないんだ。それはドーナツも同じじゃないかな? 我々はそれを証明するために探査艇をドーナツの穴に送り込んだ。聞いたこともない獣の咆哮が響き、通信が途絶えた。


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山の中で足跡を見つけた。これは凶暴な獣だな。しかし足跡は土の色が変わるほど深い。動きは鈍いな。追うとするか。はいているのは登山用の靴ではなく、スニーカーだ。エサぐらいは持ってるだろう。


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お腹が空いたな。「いや、そうでもないかな」せやろな。「なんでわかるんや」俺のしっぽ食うなや。「ええやん、美味しいし」お腹が空いたな。「いや、そうでもないかな」

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