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マイクロノベルちょいす 005「あなたの支配者」

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「たった一つの着想から生まれた君は、たくさんのクマさんが縫えるんだね」個性なんて知らないわ。私は捨てられたぬいぐるみを集め、綿を取り出し、食べる。生まれるのはクマさん。さあ、歌いましょう。元気よく。愛らしく。勇ましく。夢の楽団まであと一歩。


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「一時間後にまた来い」そう言われたので、ぼくは腕時計をセットする。時間とは天体の運行なのだ。時計を操作すれば、逆に宇宙が動くのだ。地球が回転し、月が移動し、太陽すら動く。「俺の作業時間を減らすな」ちぇっ、戻されちゃった。


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多様な存在が必要なのです。科学を作る者がいるならば使う者が必要なのです。運動が得意な者、容姿が美しい者……多様な魅力を持つ彼らのために、新しい道具を作る者も。さあ、わたしの科学を使って実現しなさい。あ、利用料金はスイス銀行に入れておいてね。


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たくさんの人たちが力を合わせて私を創ります。音楽家、イラストレーター、プログラマ、動画作家……。しかし均一にはなりません。私を創ることだけが人生ではないのでしょう。科学的表現を使うなら「熱の一部は仕事をしない」。ムチが足りないのかなあ?


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風よ吹け。彼女が空に向かって唱えると、ふわっとシーツが揺れた。その日、前触れなく発生した台風が街を直撃した。洗濯物は全滅した。

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