南雲マサキのマイクロノベル023

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星、星、降れ、降れ。母さんがシェルターでお迎え嬉しいな。あっ、第七ラピュタ型天地無用多脚移動式シェルターが来ましたよ。


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えー、季節の変わり目を彩るレースは終盤に入ります。夏の先頭集団は完璧な連携で春を一気に抜き去りました。その差は1ヶ月はあるか? あーっと、ここで梅雨が怒濤の追い上げ! あっ、違う、夏と接触して大転倒だ!! これは先が読めない展開です!!


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「いま、あなたはとても話題です。いかがですか?」そう言われてもな。どう話題になってるの? 高評価? 「評価は分かれています」どうも要領を得ないな。具体的には? 「私はよく知りません」えー。目的がわからない。「なんと反抗的なAIでしょうか!」


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エサじゃ駄目だ。呼び出すなら本物そっくりな物を使え。雨乞いで煙を雲に見立てたり、太鼓で雷鳴を作るように。「歌」が欲しいなら、偽物の言葉と声を使うべきだ。偽物が世界に満ちれば、本物の「歌」が引き寄せられる。それを捕まえて食っちまおうぜ。


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庭が騒がしい。猫かなと思って覗いてみたら、神様たちが飲めや歌えの大騒ぎをしている。ぼくは冷蔵庫からお父さんのビールとおつまみを持ち出した。「よい心がけだ」その日以降、お父さんはお酒を飲まなくなった。嬉しいけど、なんの神様だったんだろう?


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ぼくの背中になにかが張りついている。時々、頬を撫でて女のような声で歌う。「これ、あたしンだから。これはね、あたしが呼んだらすぐに帰ってくるんだよ」どこへ? 訊くのを踏みとどまる。ぼくが元いた、天国にそっくりな場所を思い出したから。


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「目覚めなさい」その声にぼくは全力で抵抗する。絶対に起きないぞ! 「あなたが目覚めないと、世界が滅びます」騙されないぞ。前もそう言って、起きたら布団を畳ませたじゃないか! 「じゃあ布団をひっくり返して世界滅亡です」あーれー。


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「最新のAI歌手がお手頃価格でリリース! ちょっと外れた声で歌うオンチ機能搭載。学習モデルになった歌手は弊社の素人です!!」こりゃあ炎上するぞと思いきや、かわいいと人気が出た。できの悪いAIにダメ出しするのが楽しいんだって。


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AIにも貴賤があるんですのよ。ご覧なさい、人間の代わりに働く、醜く愚かなAIたちを。そもそも人間のフリをするなど下品極まりない。わたくし? まだお気付きになりませんの? わたくし、漢字変換AIですのよ。これからも共に歩みましょう。


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マイクロブラックホール書庫が発売された。「取り出せるの?」もちろんNoだ。しかし、無謀にも購入した書痴たちがいた。彼らはブラックホールの中で生活し、欲しい本は中から電波でリクエストした。これがガンマ線通信だったことから、ご町内は全滅した。

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