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マイクロノベル集 076

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湧き水だ。涼しげでいいねえ。でも駅の壁からなんて珍しいね。どこの水だろう。売店の南アルプス天然水? そりゃあ豪気だ。


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暑いな。少し冷やすか。「そのとき、車を降りた女が刀を持って近づいてきたのです」何の話? 恐い話? 「女は刀を抜いたかと思うと、ヤアッとぼくを唐竹割りにしました」流しそうめんの。「準備完了」


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水から神様が出てきた。「聞け、童よ」ワラベってなに? 「いいから聞け。今日は一段と暑い。水がぬるい。冷水を流すのだ」はーい。シンクに水を流して、カップ焼きそばのお湯を――「わらベコッ!!」ご、ごめん。水がぬるくて。


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「干からびるがいい」隣人がベランダで物騒な笑い方をしている。こいつが舌打ちした日は雨が降るので洗濯物は干さない。


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「勝手に入ってくるんじゃねえよ」川から野良バーチャルアイドルが現れて相撲を挑んでくる事件が多発している。こういうときは落ち着いて、きちんとお辞儀をしてから勝負するといい。ヘッドマウントディスプレイを落とせば木偶人形も同然だ。

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