表現のその先へ

20180301ドリス・ヴァン・ノッテン(2016;出演:ドリス・ヴァン・ノッテン)

 教会は聖書を立体化したものだ。何かの本で読んだこの言葉を不意に思い出した。この映画は服飾デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテンの仕事と生活を追ったドキュメンタリーだ。TV番組の情熱大陸のように彼の仕事振りがつぶさに描かれている。

 彼は服を媒介にして自らが表現したいものを世界に向けて表現しているということが良くわかった。「ファッション(流行)は6ヶ月しか続かない(年2回のショーケース)。そういうものを創りたいのではない。」という言葉に矜持を感じた。

 オフィスビル、自宅、インド工場の存在。そして彼が各シーズンのコレクションで発表した作品(服)は世界中の彼のファンが買い求め、自宅の箪笥やハンガーラックに位置を占める。彼が表現したいものが、世界に表され、世界の中に形となって位置を占める。

 彼の仕事の合間にヨーロッパの美しい街並みが映る。そうか、昔の人は美しい建物を残し、今も修復を繰り返し継承されている。表現の大地はどんどん狭くなっているのかもしれない。今では現実世界ではなく電子世界上にも広がっている。


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