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『おはなし』暑中見舞い。

今よりも、もう少しだけ夏が涼しかった頃の話…。

ある日、ムスメさんは
近所の郵便局に向かって歩いていました。

いつもは、自家用車を利用していますので
いつも通りにしていれば、あ!っと言う間に到着出来ますが、
今日は、テクテク歩いて向かっていました。

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ムスメさんのお家には、年老いたお父さんと お母さんがいます。

お父さんは、働き者で 明るくて お友達のたくさんいる人でした。
お母さんは、生真面目で いつでも大切な一人娘を心配していた人でした。

ムスメさんは、よその人におしゃべりばかりしている お父さんがキライでした。
ムスメさんは、自分を見張ってお説教ばかりしてくる お母さんがイヤでした。

現在、お母さんは病気になった事がキッカケで身体が不自由になり、
ムスメさんと お父さんで、面倒をみています。

身体が不自由になったからでしょうか?生真面目だったお母さんは、
度々、自分を嘆いて泣きます。

お父さんは、以前よりもさらに明るくなって、
毎日散歩に行って、ご近所さんにも お母さんの事を隠しません。

ムスメさんは、自分勝手な お父さんや、
自分の心配しかしなくなった お母さんにうんざりしていました。
そんなある日に、ムスメさんは
近所の郵便局まで、テクテク歩いて向かっていたのでした。

お父さんから
「すまんが、友達や親戚にしたためた暑中見舞いを 出しに行ってくれないか?」と、
袋に入れた、数十枚のハガキの使いを頼まれたからでした。

車で行けば直ぐなのですが、わざわざゆっくりと、歩いて行くことにしたのです。

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テクテク歩いて行くと、お父さんのお友達のおじさんが、声を掛けてきました。

「やあ、ムスメさん!久しぶりだね〜。毎日頑張っているんだってね!」
ムスメさんは、何でも喋ってしまうお父さんに恥ずかしくなり
「あ、どうも…。」と挨拶だけして速足で通り過ぎました。

またしばらく行くと、ご近所のオバさんと、バッタリ会いました。

「あら、ムスメさん!あなたいつもエライわねーっ。
ホントに良くしてくれる。って、いつもお父さんから聞いてるのよ〜。」

ムスメさんは、恥ずかしくなって
「あ、ありがとうございます。」と挨拶だけして通り過ぎました。

もうしばらく歩いていると、小さい頃によく遊んでくれた おばあさんに出会いました。

「ムスメさん、大っきくなって…。優しい いい娘さんに育ってくれて…。
お父さんがね、オレが元気でいなけりゃ!って毎日散歩で会うと言ってるんだよ。
アンタも お父さんも 身体大事にするんだよ。」

ムスメさんは
「ありがとう、ございます。」と慌てて通り過ぎました。

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郵便局に着くと、
顔なじみの局員さんを見つけたムスメさんは、
ぶっきらぼうに袋ごと渡しました。

「お願いします。」
「やあ!」

小学生の頃は、よくムスメさんをいじめていた彼も、今では立派な大人です。

「相変わらず、お父さんは筆マメだね。」

はっはっは!と笑う顔は、毎日の配達で日に焼けて真っ黒です。

お父さんのハガキの塊を預かって、中身を出していた彼が
「アレ?」
と、声を出しました。

「なに?」

「?。いや そうか。これでいいのか…!」

「なによ?」

「いや、なんでもないよ。………   キミは、
幸せな女性だなぁ。」

カチンと頭にきたムスメさんは、
彼を押し退けて、ハガキを覗き込んでしまいました。

するとそこには、

『 しよちゆうおみまいもうしあげます いつもなんでもしてくれてありがとう。
 ははより』

ムスメさん宛てへの、暑中見舞いでした。
宛名に書かれた字は見覚えのある、お父さんの文字でした。

たくさん歩いて来た ムスメさんの顔は、汗でびっしょり濡れていましたが、
ハンカチで拭いても拭いても 濡れて困りました。

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後日、

ムスメさんのお家には、“ムスメさん宛て”と、
“お父さんお母さん宛て”に、
暑中見舞いのハガキが“2通”届きました。


セミが元気いっぱいに鳴いてます。
夏はいよいよこれからです。

おしまい。

暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続きますが、どうぞ
水分補給を心がけ、
元気にお過ごしください。
あなたの夏が素敵な日々となりますように。

娯楽ないみ

7月29日嬉しいお知らせいただきました。

嬉しい!ありがとうございます😊

ありがとうございます!楽しく見て、読んで、愉しんでくださったら嬉しいです\(//∇//)\ 🔔出来るだけ気をつけていますがコメントへのお返事を頂いたのに気づけない事があるかもしれません。もしも失礼があったらごめんなさい😅💦