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書籍『ALLIANCE(アライアンス)』の読書会に参加して

ほぼ日の篠田真貴子さんが主宰する『ALLIANCE(アライアンス)』(ダイヤモンド社、リード・ホフマン他)の読書会に参加してきました。いわゆる一般企業、官公庁などにお勤めの方からスタートアップやフリーランスの方まで約30名程度の参加者が集まり、ワールドカフェ方式にて実施。テーマは「日本の大企業において、『アライアンス』の概念は適用可能か?必要か?」というもの。これが非常に刺激的な場だったので、簡単にメモを。

◆外在的読書と内在的読書

読書には大きく分けると、外在的読書と内在的読書の2種類が存在する。外在的読書とは読書の目的が本の外部にあって、本は手段の一つというケースを指す。一方、内在的読書はその本を読むこと自体が目的であるようなケースで、通常HONZで本を紹介する場合は内在的読書の延長線上で行っている。たとえは悪いが、薬とヤクブツのような違いと解釈してもいいだろう。

この内在的読書の帰結をそのままに紹介してしまうと、独りよがりな書評に陥るケースが多い。自分自身では内在的な読書であったものを、さも外在的読書であったかのように変換し、読むべき理由を明示することこそが良い書評につながるのだ。無目的的に本を読めてしまうため、優れた読み手の多くが、そのまま優れた書評の書き手にならない要因もここにある。ヤクブツを薬のようにセールスできるというのは、一つの特殊技能なのだ。

◆方程式型の内容の場合、書評より読書会が向いている

書店でこの『アライアンス』という本を手にとった人の多くも、外在的読書としてこの本を選んだものと推察する。既に働き方というものについて何らかの悩みを持っていたり、働き方をプロデュースするプロフェッショナルとしてヒントが欲しかったり...。特にこの書籍については、未来形の話でかつ一定の抽象度を保持しており、自分自身の体験を当てはめながら読み解いていくという「方程式型」の内容である。

このような書籍の場合、書評を書くことの難易度は意外に高い。誰が書いても同じような内容になるケースが多く、唯一差別化できるポイントは自身の体験談であったりする。そうすると、何を書くかよりも誰が書くかという書き手の知名度の方が意味を持ってしまうのだ。もしくはピンポイントにターゲティングをして広告的なインフォメーションとして届けた方が、荷が動く可能性は高いだろう。

このようにネット書評を書いた時に感じていたハードルを、ワールドカフェ方式の読書会というスタイルは見事にクリアしていたと思う。多様性あふれる参加者たちが自分自身の体験を代入し、しかもそれらが塊として可視化される。これによって多角的な視点から、その方程式自体の評価を行うことができるのだ。読書会自体がリアルSNSの様相を呈し、話は尽きなかった。

特に印象に残ったのが、官公庁にお勤めの方と外資系コンサルの方の話である。営利企業にはないマクロな視点、また外資コンサルのように顧客企業に依存する割合が高いにもかかわらず、なぜコミットメント期間というものが成立するのかという点にも非常に興味を覚えた。

いずれにしても、ワールドカフェ方式においては参加者の多様性が鍵になる。僕がこれまで参加してきた読書会の多くは「人を介して本を知る」タイプであったのだが、「本を介して人を知る」という経験につながったのは、いつもとパラメーターが異なっており非常に新鮮に感じた。

◆本とリアルとSNS

本書がLinkedIn創業者のリード・ホフマンによって書かれた一冊であるということも、注目に値する。日本ではまだ本格的に根付いているとは言い難いサービスだが、それは働き方の実態に乖離があるからなのだ。SNSを通じて社会をどのように変革していきたいのか、そういう世界観を提示するツールとしても、本書は有効に機能しているものと感じた。

変革が進んだ後には自ずとLinkedInが必須のビジネスツールになっていくことだろうから、SNSのプロモーションツールとして本を活用するというやり方もあるだろう。本とリアルとSNSが密接に絡み合う先には、書籍の新しい可能性が広がるに違いない。

◆その他、ワールド・カフェ方式の読書会が向いていそうな書籍について

この他には、最近出版された本の中でワールドカフェ方式に向いていそうなものを、いくつかピックアップしてみた。どのようなテーマを設定するか、参加者のメンツをどのように構成するか、考えて見るだけでも、より深い気付きを得ることができるだろう。

・『ゼロ・トゥ・ワン
・『HARD THINGS
・『権力の終焉
・『歴史認識とは何か
・『WORK RULES
・『ソーシャル物理学
・『嫌われる勇気

今年は、この他にもいくつかの読書会に参加してみたいと思っている。

最後になりますが、読書会に招いていただきました篠田 真貴子さん、ハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐 文夫さん、関係者の皆様、参加者の皆様、本当にありがとうございました。

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