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ドア影に隠れる息子【エッセイ】

どうにも季節外れなのだが息子がスノーマンのアニメーションにハマっている。スノーマンはレイモンド・ブリッグスの絵本を原作とした1982年に公開されたアニメーションだ。

30分くらいの動画だが、最近飽きもせずに毎日の様に視聴している。そして毎回同じリアクションをするので面白いなと思いその行動をnoteに記録することにした。

スノーマンのオープニングは暗い。夜の世界にコンコンと雪が降る様子をグ~と見せつける。そのあまりの暗さに息子はアニメが始まるとまずドア影に隠れるのである。完全にビビっている。あんなにリモコン片手に「スノーマン!スノーマン!」とせがんでいたのに全くもって不思議である。

雪の降り積もった朝に男の子が雪だるまを作るところからストーリーは展開されてゆくのだが、息子はこの段階でもドア影から動こうとしない。

息子が部屋の中に近づいてくるのはスノーマンが動き出してからである。本来なら雪だるまが突然動き出すほうが怖いことだと思うのだが子供の感性ではそうではないのだろう。

スノーマンは男の子の家の中で一杯イタズラをする。タンスを開けてスーツを着たり、お化粧で遊んでみたり、暖炉の前で居眠りして溶けかけたり。このあたりまで来ると息子は私の膝の上に座ってくる。キャッキャと笑い出す。台詞回しのないアニメでこんなに爆笑できる息子を少し羨ましく思う。

その後、雪上をバイクで乗り回したりして、最終的には男の子と手をつなぎ空を飛ぶのである。メインイベントである。BGMも壮大な曲調へと変化する。『スノーマンと言えばこのメロディだよね』となるあの旋律だ。

ドローンで撮影したかの様な空中の流れる景色の映像は圧巻だ。この頃には息子は完全に向こうの世界の住人となっている。

そして森の奥深くに進み、たくさんのスノーマンと出合い踊り狂う。夢の国である。

しかしこの世界は長く続かない。再びスノーマンと空を飛び帰路につく男の子。家の前で二人は抱擁しあい手を振って別れる。男の子がベッドの上で眠り、次に目覚める時、強い朝の光の向こうでスノーマンは溶けているのである。

「スノーマン!溶けてなくなっちゃったねー」息子が私に話しかけてくる。これで終わりだ。

ここ数日この流れを何回も繰り返している。

今日もきっと同じことを繰り返すだろう。


#エッセイ #日記

ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー