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企業らしさの追求〜スターバックスのブランディング〜

先日、こんなことを聞かれました。
「なぜインナーブランディングをした方がいいのですか?」
私は即答しました。「売上アップにつながるからです!」

ビジネスの施策なので当然のことなのですが
特に経営者ではない方には「お金を稼ぐ」ことを下品なことのように思っている方もいるような気がします。


しかし、お金を稼がないとビジネスとして成立しませんし、
従業員のみなさんやその家族を生活させられません。

2016年の調査で、給料が不満という人は78%だったそうです。
なので私はハッキリと申し上げるようにしています。
インナーブランディングは、売上に貢献します!と。

ただ、単純に売上アップさせることがインナーブランディングではありません。
その企業らしく売上アップさせる施策です。

スターバックスのブランディング


ここからはスターバックスの事例をご紹介します。
いま、コンビニで安くておいしいコーヒーを買うことが出来ます。
そんな中でもコンビニコーヒーの数倍の価格のスターバックスの売上は好調です。
スターバックス・ジャパンの2018年の売上高は、1,827億円。純利益は112億円です。

2019年1月での店舗数は1,392店舗で、1店舗あたり1.3億円の年間売上があるそうです。
1ヶ月にすると、約1,000万円ほどの売上。純利益は年間800万円ほどです。


スターバックスのインナーブランディング
スターバックスは、何よりも「従業員満足度」を大切にしています。
「従業員満足度の先に、顧客満足度がある」という考え方です。

● 行動指針
・お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる
・事業運営上での不可欠な要素として多様性を受け入れる
・コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売において、常に最高級のレベルを目指す
・顧客が心から満足するサービスを常に提供する
・地域社会や環境保護に積極的に貢献する
・将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する
 引用元:Starbucks


スターバックスは、年間80時間の研修など、人材育成に力を入れています。
マニュアルは存在せず、従業員1人ひとりが顧客満足のために
自主的に行動することが求められているのです。
従業員がそれぞれに「満足してもらえる接客」を考えているんですね。

スターバックスは広告に費用をかけないことで有名です。
広告費をかける代わりに人材育成に費用と時間をかけることで、
従業員の言動や対応のひとつひとつがブランディングになっている。と言えるのではないでしょうか。


スターバックスらしさの喪失

スターバックスを世界的な規模に成長させたハワード・シュルツは、企業ポリシーを徹底しました。
「サードプレイス」というコンセプトを掲げ、
自由に過ごすことが出来る、くつろげる空間を提供したのです。

これは、回転率の悪い顧客を積極的に受け入れるという画期的な考え方でした。

利益の名のもとに倫理観や誠実さを失わない姿勢の表れでした。
この姿勢を貫いていたからこそ、優秀な人が集まり、顧客は支持しました。


ハワード・シュルツは2000年にCEOを退任しました。
後任の経営陣は、スターバックスの更なる成長を急ぎました。

無理な出店計画は、様々な歪みを生むことになります。
売上を獲得しようと企業ポリシーを曲げて商品開発が行われました。

その代表例が、チーズ入りサンドウィッチです。
このチーズ入りサンドウィッチ、とても売れたそうです。
しかし、チーズの焼け焦げた匂いが店内中に広がり、コーヒーの香りを台無しにしていました。

開店ラッシュで店のデザインを画一化せざるを得なくなり、
ぬいぐるみやCDなどのエンターテイメント系の商品まで扱う始末。

スターバックスらしさの喪失により、赤字に転落。ブランドに陰りが見え始めました。
危機を感じたハワード・シュルツは、2008年にCEOに復帰しました。


らしさの喪失からの復活劇

誰もがスターバックスは終わった。と思いました。が、ハワード・シュルツは誰もが驚く改革を行いました。
全米7,100の全店舗を一斉に閉鎖したのです。
目的は、全バリスタの再教育


この閉鎖期間の損失は、数百万ドルと言われています。
しかし、損失を出してでもスターバックスの存在意義を守ろうとしたのです。

さらに、売上好調だったチーズ入りサンドウィッチを廃止しました。
チーズの匂いのする店はスターバックスとは言えない。という意思の表れです。

新たなバリュー(行動指針)も作り上げ、従業員は愛社精神を取り戻しました。

ハワード・シュルツは自身の考え方を、こう表現しています。
「ブランドは愛されなければなりません。そのためには、まず従業員が会社を愛していないと始まらない。それが大きな力を生み出します」

スターバックスは驚くべき回復を見せ、ハワード・シュルツがCEOに復帰して3年ほどで
120億ドルと過去最高売上を記録しました。


業績不振の時は経営合理化を行いがちですが、
その合理化が更なる業績悪化を招いてしまうこともあることを教えてくれます。

「自社らしさ」を設定することは難しい側面もあります。
社内にいると日常的で当たり前なことこそが「らしさ」であるからです。

現在はCEOを退任したハワード・シュルツ。
最大の仕事は、社員1人ひとりに
「スターバックスらしさとは何か? らしさのために出来ることは何か?」
と考え続けさせる仕組みを作ったことではないでしょうか。


まとめ


・インナーブランディングは、その企業らしく売上アップさせる施策。
・従業員の行動や対応のひとつひとつがブランディング。
・らしさの喪失は、損失を生む。らしさの確立は、利益を生む。
・経営合理化が更なる業績悪化を招くことがある。

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