声を失って

今日私は声を失った。
理由はおそらく精神的なものだろうと思う。声が出ないほかに身体に異常はないからそう思いたいだけだとも考えてしまうのだが。

この事実に私はとても恐怖を感じている。
だってそうだろう、今まで喋れていたのに急になにを聞かれても話せなくなってしまったのだから。
当たり前のことができないということに恐怖を感じると同時にここまで自分は弱かったのだと悔しさが胸の内に膨れ上がる。

そうなってしまってから、文字が使える媒体が多くある時代に感謝した。
声が出なくなった際に、それを伝えることができたのは、制服に入れておいた携帯のメモ帳機能だったからだ。
それがなければ私は誰にもこのことを伝えられなかっただろう。そうなってしまっていたら、おそらく目の前すら見えていたか、申し訳なさから気を保てていたか、それすらも怪しい。
だからこそ、この時代に感謝をしないといけない。文字がいつでも使えるこの時代に。

とはいえどだ、言葉が話せないと文章を考えるのも一苦労だ。
音による確認ができないというのはとてもつらく、次の言葉も出てきにくくなるということを認識させられた。
今は何とか脳内で自分の声を思い出せるので辛うじて文章にすることができているが、それすら忘れてしまったら私はこうして綴ることもできなくなるだろう。
それは私としてとても避けたい事実だ。
まだ無名だけれども、一つのサークルの代表として小説を書くことを楽しみにしていたのに、それができなくなると考えただけで自分が溶け出してしまいそうになりそうだから。

人は記憶から人のことを忘れる際に声から忘れると聞いたことがある。つまりだ、先ほど言ったことがいつ起こるか、怖い。
今まで自分の声は好きじゃなかった。でもそれを忘れるのが今はとても怖く感じる。

これほど声に思い焦がれたのは初めてだ。


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