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日本の経済学では、他人の専門性を正しく評価でき、成果を社会に還元できる人材の育成が課題

「他人の専門性を正しく評価できる人材の存在意義 (https://note.mu/rmsi_isng/n/nd58d9d7fd1ff ) 」が日本、特に日本の経済学では非常に重要で、この層をいかに拡大するかが実は現在日本の経済学で最も重要ではないかと思っています。

よく引用する話ですが、例えばパリコレやミラノ秋冬みたいなファッションショーで(スーパー?)モデルが着ている服を実際に着る人ってほとんどいないですよね。じゃあ、こういったファッションショーが意味がないかというと全くそういうことではなく、ファッションショーを観ている観客の多くはデザイナーで、ファッションショーを観て、それを一般向けにいかにデザインするかを考えるのだそうです。その結果、最新のファッションを取り入れた衣服が店頭に並ぶんだそうです。

経済学も特に難しい純粋理論は本当にパリコレのファッションショーに似て、現実に応用するのがきつそうなんですが、そこをうまく噛み砕いて、現実に合わせていくプロセスが必須です。

しかし、日本ではまだまだこういうプロセスを担う層が薄いです。実は世界でもこれが問題になっています。2017年の暮れですが、RIETIのEBPMのシンポジウムで青柳さんが説明していました(
https://www.rieti.go.jp/jp/events/17121901/pdf/2-2_aoyagi.pdf) が、世銀のプロジェクトで、EBMPを行って、研究論文を書こうというプロジェクトは多数存在します。しかし、それが現実の援助に直接結びついているかというと、実はそうではないとのこと。これ、学者だと本当によくわかるのですが、学者の研究はまだ誰も行なっていない、難しく、一般性の高い研究を行うのが仕事で、それを目指します。

しかし、現実はもっと当たり前で、援助の局面にカスタマイズされた研究が必要になります。ただ、学者としては、そういう研究の評価は高くなく、資源を投じるならできるだけ避けたいところなのです。

ということで、「専門性を持った人材が社会において機能するためには、彼ら彼女らほどの専門性は持っていないが、その専門性を正しく評価し、彼ら彼女らを支援し、適切に処遇する」のに加えて、専門家の成果を適切に社会に還元できる人材が、当の専門人材よりはるかに多くなければならないです。

日本の経済学では、かつては(もしかして今も)経済の博士号どころか経済学も知らない人が評論家として活躍して、ひどくなるとそういった人材を大学教授にする(誤爆を避けるため、具体例をいうと、D大学のM永氏)ということもあるわけですが、もっと博士号やPh.D.を取っている人が、そういう研究も踏まえて社会に経済学の成果を還元するということが必要ですね。そういう面からすると、大阪大学の安田さんのように世界でトップの研究をしながらテレビでも活躍するというのが理想ですが、流石に稀有な人材なので、もう少し両面からこのギャップを埋めていきたいところです。

最近、最新の研究を聞くと、アカデミックな分野からはむしろ現実を埋めるような研究がどんどん出てきているので、エコノミストももっと修士(できれば博士号)とった人が出てきてほしいですよね。



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